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高崎商業高校司書専門員  太田 克子(玉村町上之手)



【略歴】群馬大工学部卒。県立図書館などを経て現職。読書に向かわせる読書教育法(アニマシオン)を実践、講師などを務める。日本図書館協会学校図書館部会幹事。


ブックトーク



◎豊かになった調べ学習




 県内のある市の小学校司書、教諭と地元の公立図書館司書がとてもいいコラボレーションをしている。調べ学習の授業に入る時に、学校司書と公立司書が協力して子どもたちにブックトークをすることで、子どもたちの視野が広がり、興味関心が高まって学習に効果を上げているのである。

 よく「公立図書館と学校図書館の連携」というと、公立図書館の本を学校に貸し出す印象があるが、このようにプロの司書同士が協力して、子どもたちの学習意欲を高める例は珍しい。

 ブックトークとは、あるテーマに沿って本と本をお話でつなぎ、複数の本を紹介する手法。詩、写真絵本、科学読み物、物語などバラエティーに富んだものを紹介することで、本との出合い、楽しみを伝える。子どもたちは紹介されたさまざまな本から自分が気に入った本を選ぶのである。

 調べ学習にブックトークを取り入れたのは2007(平成19)年の小学5年生の総合学習。子どもは経験が少ないから、テーマを決めようにも思いつかない。1つ事例を紹介したら、全員同じになりかねない。担当教諭と学校司書、公立司書で、児童全員が違うテーマになるくらいおもしろい本を紹介しようと周到な準備の下、実施した。

 学習内容に精通し児童と自校資料を知る学校司書と、地元の小学生を知り自館資料を知る公立司書は、情報を交換し研究した。多岐にわたる図書の紹介はもちろん、地元の博物館等の協力を得るなど、地域に関するものも多くとり入れ郷土色も忘れない。二人の掛け合いで進むブックトークは、実物のコメを見せるなど工夫を凝らし、子どもたちに本の内容をクイズに出すなど楽しくテンポ良く進められた。

 その結果、調べ学習では今までにないテーマの豊かさをもたらした。以後、この地区では別の調べ学習についても、引き続き彼女たちに依頼し、ブックトークを取り入れている。子どもたちの学びが豊かになるからだ。

 今年は、ブックトークを参観した管理職をはじめ先生方も児童とのコミュニケーションに加わり、全員でブックトークを盛り上げた。温かい授業だ。ブックトーク後、多くの本を手に子どもたちは本の楽しさを知り、自ら知りたいと思った。いま、子どもたちは課題を解決していく喜びを学んでいる。

 調べ学習の「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」といった一連の探究過程は、図書館の彼女たちなくしては成り立たない。彼女たちの研究する真しんし摯な姿勢を尊いと思う。人を育てるのは人だ。この取り組みに他に類を見ないコラボレーションの可能性とすばらしい人材を有する幸せを感じる。そういった人々を大切にしたい。








(上毛新聞 2010年7月25日掲載)