視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
いせさきFM放送取締役放送局長  高橋 忠文(伊勢崎市連取町)



【略歴】東京工科大メディア学部卒。大阪の証券会社社員、FMたまむら放送局長を経て2008年11月、いせさきFM放送の開局と同時に取締役放送局長に就任。



地域情報の鮮度



◎不可欠な現場リポート



 コミュニティー放送局には、重要な仕事がある。それは、街の中をリポートすることである。よくあるのだが新しくスタッフとして入って来た人に、街の情報を取得してくるように言うと、パソコンの前に座ってインターネットを眺めることが多い。

 しかし、インターネットを眺めていても地域情報なんてほとんどない。だいいちインターネットに掲載されている情報は、すでに旬ではない事が多いのである。ここで言う旬とは、日付が最新であるとか更新されているということではない。

 番組作りの上で第一に考えるのは、情報の鮮度である。ただ、情報の鮮度というと、他のメディアで扱う一般的なニュースをいち早く放送することと想像する方が多い。しかし、コミュニティー放送局のいう情報の鮮度とは、他のメディアでは扱わない独自の視点からの情報である。

 地域密着の情報を扱う当社にとっては、その取得先は街にあると思っている。その意味で街の情報をリポートするリポーターの役割は大きい。リポーターが街の情報をどんどんリポートしていない放送局は「コミュニティー放送局とは言えない」と私自身は思う。

 コミュニティー放送の原点は、リポーターによる、地元情報の発見と発信である。何かイベントがあるとして、それを「今日こういうイベントがあります」と放送すれば、情報発信にはなる。

 しかし、それでは鮮度がない。イベント会場にリポーターが行って現場をリポートすることで、会場と放送局が一体化する。これが生放送の醍醐味(だいごみ)である。そして、それを聴いた人は、そのライブ感に共感して足を運ぶ。これがコミュニティー放送の使命だ。

 「この街には面白いことがない」と、地方都市の多くの生活者がそう思っている。しかし、それは共感できる情報がないだけで、まだまだたくさんのオモシロイがある。これを発見し、発信するのがリポーターの役目である。

 時々、取材をさせていただく方に「そんな放送局があったんだ。知らなかった」と言われることがある。それは決して不思議なことではない。ラジオそのものを聴かない方もいるからである。

 ただ、その方たちはその後必ず、いせさきFMのファンになってくれる。「あれから、いせさきFMを聴くようになったよ」。そう聞くと、コミュニティー放送はやはり地域に必要なのだという思いを新たにする。

 リポーターは単にリポートをするだけではなく、街に眠っている未開拓の人や出来事を伝え、さらにはコミュニティー放送局と市民との懸け橋としての役割も担っている。







(上毛新聞 2010年8月1日掲載)