視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
日本銀行前橋支店長  柴山 卓也(前橋市大手町)



【略歴】埼玉県生まれ。一橋大卒。日本銀行では、米国ブルッキングス研究所客員研究員、総務人事局、金融機構局などを経験。一昨年5月、前橋支店長として着任。



教育現場に出向く



◎胸熱くした目の輝き




 群馬経済同友会は、若年層の健全な職業観の育成、将来を考えるためのきっかけ作り等を目的に、会員である企業経営者らが中学校、高等学校等に出向く出前講義を実施している。本年度から講師リストに加えていただき、これまでに前橋市立第四中学校、県立前橋高等学校へ出向いた。

 後日、学校から届けられた生徒一人一人の感想文を読んだ。皆の声や悩みが聞こえてくるようだった。昔の自分を思い出し、1対1で話し合いたいという気持ちになった。以下、私の印象の一部をご紹介したい。

 第1に、働くことに対する負のイメージの根強さを実感した。「『収入は、上司の命令に従い、働かされることを我慢する対価だ』と思い込んでいた」という声が少なくない。こうした負の職業観は学ぶ意欲を損ねる可能性が高い。

 私は、仕事の中でつらいと思った経験等を率直に吐露した。同時に、(1)職場に限らないが、自分が必要とされているという感覚が生きる支えになる(2)仕事は自分を磨く機会になり得る(3)成長すれば周囲の信頼はより高まる、と訴えた。「働くことに対する見方が変わった」という感想を読み、うれしく思った。

 第2に、「企業の採用において出身校の重要度は高くない」と説明したところ、「ショックを受けた」という感想が目立った。「学歴神話」の根強さに驚いた。

 入学試験に向けて勉強する意義を否定するつもりはない。しかし、学歴は、事実上、入学した学校の名前に過ぎない。人生の豊かさを左右するのは、入学後、さらに社会に出た後の「学習歴」だ。学ぶ意欲、そして謙虚さと素直さを持ち合わせていれば、成長する機会は無限にある。仕事や生活における失敗は人を磨き、賢くする。併せて、実社会には多様な生き方がある。自らの生きる意味を見付けてほしいと切に願う。

 第3に、「他人との信頼関係を構築するためには、人々に好かれる態度、例えば気持ちの良い挨あいさつ拶、はっきりとした返事、笑顔、人の話を丁寧に聞くことが大切である」と諭した。

 当初、「聞き飽きた」と、斜に構えられることを覚悟していたが、杞きゆう憂であった。「より良い社会生活を送るために、不可欠な資質であるというところまで深く考えたことがなかった」という感想が印象に残った。

 出前講義では資料(日本銀行前橋支店ウェブサイトに掲載)を配布した上で「学校生活と将来の姿を結び付けて考える契機にしてほしい」と願いながら夢中で話した。生徒たちの目の輝きに胸を熱くした。さらに、生徒たちの感想文からエネルギーをもらった。教育の担い手は家庭と学校であるが、社会人が側面から支援する意義を再認識した。






(上毛新聞 2010年8月22日掲載)