視点 オピニオン21
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書肆画廊・奈良書店経営  奈良 彰一(桐生市本町)



【略歴】東京・神保町の古書店で修業。現在は、桐生祇園祭の屋台と鉾(ほこ)の研究、保存に努めるほか、安吾を語る会の代表。大川美術館嘱託。桐生市観光基本計画作成委員。


群馬DCに向けて



◎「静」と「動」で差別化を




 今、プレ群馬DCが真っ盛りである。しかしなじみの薄い言葉は、まだまだ浸透してきたとはいえない。DCつまり「デスティネーション・キャンペーン」は「目的地」と「宣伝隊」の合成語で、JR6社と自治体や民間が連携した最大規模の観光PR行事ということである。1978年に旧国鉄と和歌山県が取り組んで始まったという。1年に1回から4回までまちまちだったらしい。京都が群を抜いて21回、新潟が6回、群馬も3回と上位に食い込んでいる。温泉地の魅力であろうか。

 今年は奈良が終了した。10月から長野が始まる予定で、昨年10月から「月刊信濃DC新聞」を発行し意欲的である。

 群馬は来年7月からいよいよ始まる(9月まで)。このオピニオン欄の1回目に前説のつもりで観光について書かせていただいた。群馬の観光資源は、多様なニーズに十分応えられるはずである。DCでは何本かの柱を立てるだろうが、温泉や自然、伝統そして、近代化遺産はもちろんで、国内のみならず外国旅行者にも群馬の特質をPRすべきだ。

 私はこれに「静」と「動」の二つの柱を追加して挙げたいと思う。まず「古墳の国・群馬」を据えていいのではと思っている。1935(昭和10)年に刊行された「上毛古墳綜覧(そうらん)」には8423基の古墳が調査されていた。旅人の多くは中高年であろう。この世代は大変な考古・古代史ファンがおり、探求心が旺盛なのだ。必ずや他県との差別化ができるに違いない。企画次第で「静」の代表格になるだろう。

 そして「動」の代表は「上州の山車祭り」である。日本人は夏本番となると、あちらこちらの祭りをめがけて移動する。祭りの楽しさや美しさは、現地でこそ味わうことができる。群馬のえりすぐりをぜひ紹介したいものである。

 山車(鉾(ほこ))や屋台とお囃子(はやし)の競演は珍しいものではないが、地域の個性はそれぞれオンリーワンなのである。目当ては祭りそのものから、人形か彫刻か四方幕かそれともお囃子か、人それぞれである。選択肢は多く、決して少数を対象としたマニアックなものにあらずなのである。

 県外の祭礼関係者との付き合いの中から、注目度が高いことをよく耳にする。江戸型山車が主流の群馬だが、実は屋台も個性的なものが多いのである(山車、屋台は同意語として使用)。超大型の桐生をはじめ、前橋、鬼石、玉村、藤岡、伊勢崎などは魅力的である。

 1年後も読めない昨今、いつ古墳ガールや祭りガールなる人種が出現するかも知れない。今後、ぜひ個性豊かな新ポスターやミウラ折りのマップも製作してほしいものである。群馬のデザイン力に期待して。







(上毛新聞 2010年8月25日掲載)