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電通 メディア・プランナー  一文字 守(東京都品川区)



【略歴】高崎高卒。慶応大大学院修了。電通勤務。マーケティング、営業部門を経て、現在はメディア・プランナーとしてさまざまな広告主の広告計画立案に携わっている。


1年後に迫る地デジ化



◎広告ビジネスに影響も




 皆さんが普段見ているテレビ画面の右上に「アナログ」の文字は出ていないだろうか? もし表示があるとしたら、そのテレビは2011年7月24日には何も映らなくなってしまう(正確には通常のアナログ放送は11年6月末をもって終了し、7月1日以降はお知らせ映像のみとなる)。

 テレビ地上波のデジタル化、通称「地デジ化」が1年後に迫ってきた。そもそも地デジ化は国策であって、放送局や家電メーカーが独自に推進しているわけではない。国の政策の一環なのである。

 近年携帯電話等の爆発的な普及により、日本全体で使用できる電波の周波数帯域が限界に達しようとしている。そこで、周波数を効率的に使用するためテレビ放送のデジタル化が決定された。

 デジタル化のメリットは電波の効率的利用だけにとどまらず、視聴者サイドにももちろんある。高画質かつ高音質の番組を楽しむことができるし、データ放送では最新のニュースや天気予報など生活に必要な情報がいつでも入手可能になる。

 また、1つのチャンネルで2~3番組を同時に放送することも可能であるため(画質はアナログ放送並み)、選択肢が広がる。電話など通信機器とつなぐことにより双方向のやりとりも可能になる。

 この地デジ化は広告業界にも多大な影響を及ぼす可能性がある。テレビのCM枠の売買は視聴率データをベースに行われている。地デジに完全移行した場合、この数値がどのように変動するのかが業界の関心事である。予測としては、世帯視聴率はそれほど変わらないものの、個人視聴率はやや低下するのではないかと懸念されている。

 また、現在の視聴率はテレビでオンタイムに見られているだけのスコアであるが、パソコンや携帯電話での視聴や、HDDレコーダーをはじめとする録画視聴の数値化もこのタイミングで行われることになるかもしれない。こういったデータは広告ビジネスに直接的に反映されるため、われわれにとっては大きな変化となるのだ。

 地デジ視聴のためにはテレビの買い替え、もしくはデジタル・チューナーの購入・設置が必要である。また、場合によっては新しくUHFアンテナの設置やケーブルテレビへの加入が必要になることもある。この動きに便乗した悪徳商法も増えていると聞く。まずは総務省のホームページをご覧いただき、何か疑問があれば総務省が設置している「デジサポ」に問い合わせしてほしい。

 1年後には、県内の全世帯でスムーズな地デジ化が行われ、楽しいテレビライフが送れていることを祈念している。








(上毛新聞 2010年8月29日掲載)