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NPO法人自然塾寺子屋理事長  矢島 亮一(高崎市中尾町)



【略歴】宇都宮大大学院修士課程修了。青年海外協力隊員としてパナマで2年間活動し、帰国後に自然塾寺小屋を立ち上げた。2003年にNPO法人認証を受けて現職。


国際化の推進



◎広い視野と行動力を




 国際協力の世界でも国際競争は激しさを増している。こうした中で「国際化の推進」は当団体でも最優先課題の一つである。当たり前ともいえる国際化の重要性を掲げたのは次のようなメッセージを伝えたかったからである。

 日本は明治維新後、お雇い外国人を招いたり、外国のさまざまな考え方、技術を輸入してきた。日本は外国の技術を吸収し、しっかりした制度や技術に具体化していけるだけの知的蓄積があった。なまじそれだけでやって行けるから、逆に自分たちだけでやって行けるという感覚になった。しかし、もうそれだけではうまくいかない。今後は考え方も習慣も言葉も違ういろいろな方々とぶつかり合う中で、試行錯誤を繰り返しながら新しいものを作り出していく必要がある。海外の経験を持った青年海外協力隊経験者を日本の社会、特に地方に増やす必要ある。経験や知識があるから雇うという発想ではない。

 現在日本にいる外国籍労働者を地方に増やすことも同じ考えで進めて行く必要がある。ただ、そのような人材が地方に来るのをためらうことが少なくない。理由はいくつかあるだろうが、まずは生活環境や経済的条件、また社会全体の受け入れ態勢にも問題があるように感じる。地方で就職しようと思っても就職できるとは限らない。このままでは地方が崩壊してしまう。

 一方、日本の若者も日本に閉じこもらず、経験や活動を広げて行く必要がある。青年海外協力隊や海外ボランティアだけでなく海外留学も減っている。背景には、インターネットを通じて世界の情報が手早く得られるようになったことがあろう。簡単に寄付ができ、ボランティアに参加した気分になれる。また日本が豊かになりすぎ外国へのあこがれがなくなり、あえて海外に行く必要も感じなくなったという一種の自足感があるのだと感じる。きれいにまとまった日本の社会からはずれるのが怖いという感覚もあるのかもしれない。だが、もはや閉じこもっていられない時代である。世界といろいろな形でつながりを持つことが個人にも日本にもプラスになる。

 研修プログラムでは「国際的な広い視野を有し、行動できるタフな人間の育成」を目標に掲げている。それは単に外国語が話せるとか、世界の出来事が分かるというだけではない。国際経験を通じ、異なる考え方や発想、価値観とぶつかり合い、その中でたくましさと柔軟性を鍛えられる。そうして蓄えた力をもとに失敗を恐れず行動できる人間として成長する大きなチャンスである。今後はもまれる中に飛び込んでいく必要がある。失敗と成功を繰り返すこと自体に意味がある。そうした経験こそが次の時代の日本を支える基盤になるからである。







(上毛新聞 2010年8月31日掲載)