視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
対話法研究所長  浅野 良雄(桐生市三吉町)



【略歴】東京福祉大大学院修了。群馬大工学部卒業後に電機メーカーで自動車関連部品の研究開発。その後、コミュニケーションの指導や講演活動などを行っている。



事故と人間関係



◎確認型応答で改善を




 職業柄、事故とコミュニケーションの関係に関心がある。自分の周りはもちろんのこと、メディアを通じて知ることのできる事故の原因を探っていくと、どこかでコミュニケーションの問題に突き当たることが多い。伝達ミスを主な原因とする、交通や医療機関における事故は、その典型である。また、それらの根底には、職場の人間関係や、日常的なミスを報告しにくい組織の問題もあるが、これらもコミュニケーションと関連している。

 私は心理カウンセラーでもあるため、企業などから、職員のメンタルヘルス(心の健康)をテーマとした研修の講師を依頼される。私の場合、心の病の予防法をコミュニケーションの視点から話すことが多い。なぜなら、これらの問題が事故と連鎖していることを知ってもらいたいからである。

 一般的に、職場の人間関係が悪いと個人のストレスが増大し、心の健康度が低下する。すると、脳の働きが悪くなり、作業の能率や信頼性が低下する。加えて、注意力も低下するため、誤解や伝達ミスが増えるとともに、それに気づきにくくもなる。その結果、トラブルや事故が発生し、その対処のためにストレスが増大する。そして、さらに人間関係が悪化するという悪循環である。

 しかし、循環であるなら、連鎖のどこかを断ち切れば改善は可能である。ここでは、コミュニケーションの観点から改善策を考えてみる。たとえば、相手が伝えたいことの要点を聞き手が確かめる「確認型応答」(確認と略すこともある)を実践すれば、誤解や伝達ミスが防げるであろう。それにより、信頼関係も維持されるので、安心して本音が言いやすくなる。そして、ミスが小さいうちに報告され、早めに対策をとりやすい職場環境が実現するだろう。もちろん、これは理想であるが、確認型応答の実践の先には、多くの可能性が開けている。

 ところで、確認型応答は、相手が伝えたいことのどこを確認するかによって2つに分類される。「気持ち」と「事柄」である。たとえば、相手が、「最近、暑くて、よく眠れないんです」と言ったときの、「眠れなくてつらいんですね」は、気持ちの確認であり、「近ごろ、よく眠れないんですね」は、事柄の確認である。なお、「そのうち、眠れるようになりますよ」は、自分の考えや気持ちを言う「反応型応答」である。ほとんどの職場では、業務上伝え合う内容が、5W1Hなどの「事柄」であることが多いため、気持ちの確認をすることは少ないが、医療や福祉、教育の分野では、気持ちの確認が欠かせない。応答が、確認型と反応型とに分類できることに加えて、確認型が、さらに、気持ちの確認と事柄の確認とに分けられることを知っておくと便利であろう。







(上毛新聞 2010年9月18日掲載)