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高崎商業高校司書専門員  太田 克子(玉村町上之手)



【略歴】群馬大工学部卒。県立図書館などを経て現職。読書に向かわせる読書教育法(アニマシオン)を実践、講師などを務める。日本図書館協会学校図書館部会幹事。


スペインの図書館



◎コミュニティーの役割




 学校図書館には、応援してくれる利用者がたくさんいる。「修学旅行に行ってきました。この縫いぐるみ、飾ってください」というA君。「本を貸すときに感想を書くカードを入れるんです。書いてもらって紹介しましょう」というB君。Cさんは「ねぇ、1冊読むごとにポイントをためて、いっぱいになったら学用品と景品交換ってどうですか?」とニッコリする。学校図書館が居心地良く、楽しくなるアイデア満載だ。だからこそ、私も背筋を伸ばさなければならないと思っている。

 かつて、スペインに行った。マドリードから北東へ約60キロのグアダラハラ市。半円形の出窓風のバルコニーをいくつも配したイスラム様式の宮殿が、旧カスティーリャ・ラ・マンチャ自治州立図書館だった。案内してくれたのは元市長で女性館長のブランカ・カルボさん。徒歩数分の所にある、15世紀の貴族の館へ引っ越したばかりという。ベージュ色の柔らかいライトの下、現代的で洗練された空間に、紋章が刻まれた飾り棚や歴史を感じさせる調度品、寄せ木細工の天井が調和していた。便利にはしても、歴史と伝統は大切に保存する。そこで人々は寛(くつろ)ぎ、熱心に調べものをする。

 障碍(しょうがい)をもつ子どもたちのための点字本や布絵本、思春期の子どもたちのためのコーナーなど、デリケートな人を大切に育てる。郷土に関して必要なものは製本して保存する。図書館の心意気を示していた。

 回廊に囲まれた広いスペースには観葉植物といす。聞けば「図書館はコミュニティーの役割ですから」。図書館と市民が企画して人々を結んでいた。朗読のリレーをラジオで流し、読書マラソンは、夜を徹して行われ、町全体で楽しむ。

 さて、その新図書館オープン当日。500人以上の市民が、旧館から新館へ1001冊の本を手渡しで運んだ。1001という数字はイスラムでは、アラビアンナイト(千夜一夜物語)に出てくる。意味は「無限」。1冊目は「ドン・キホーテ」の第1巻、最後にその第2巻で完了した。「ドン・キホーテ」は世界80カ国で翻訳され、聖書に次ぐ大ベストセラー。刊行から400年余り。文化に対する誇らしさを感じる。ここでも「市民の力」が図書館と共にある。

 来年4月には、高崎市立図書館が県内初のICを使った、最先端の図書館に生まれ変わる。その高崎市で初めて図書館を作ったのも市民運動だった。明治42年、「高崎同気茶話会」という青年団体が中心になり、青年の社会教育のために、個人と団体の寄付で図書を購入した。鉄道開通の折、明治天皇の行在(あんざい)所として建築された春靄館(しゅんあいかん)を市から永久貸与されての開館だ。まさに「市民の力」である。

 本校学校図書館には、A君が届けてくれたぬいぐるみが、今日もみんなに愛嬌(あいきょう)を振りまいている。







(上毛新聞 2010年9月19日掲載)