視点 オピニオン21
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ザスパ草津チーム統括マネージャー  橋本 毅夫(前橋市駒形町)



【略歴】東京都出身。順天堂大卒。C大阪、2002W杯日本組織委、選手代理人業務などさまざまな分野からプロサッカー界にかかわる。06年からザスパ草津勤務。



コミュニティーとクラブ



◎強いだけでは続かない




 サッカークラブの経営はあくまでもビジネスであります。ヨーロッパや南米のビッグクラブともなると、たった一人の選手の移籍で、巨額な資金が動くことになります。

 ビッグクラブであればビックスポンサーやオーナーからの資金力に任せて有力・有名選手を集め、魅力のあるチームを作ることで集客を増やし、多額のチケット収入を安定して得ることができます。しかしながら、私はただ強いだけのクラブづくりは、日本では長続きしないと考えます。お金で買えない価値をクラブは持たなければならないと思うからです。

 以前のオピニオンでも書きましたが、クラブそのものが地域の無形文化財として存在すること。社会的評価を受けるクラブづくりが必要となるものと考えます。もちろんチーム成績が良い事に越したことはありませんが、優勝やリーグの昇・降格といったチーム成績に左右されないクラブ経営ということです。それには、クラブが地域のコミュニティーそのものになるということが必要です。

 私は最近、Jリーグの海外研修でイギリスに行ってきました。ビッグクラブからザスパと同レベルの経営規模のクラブまで、すべてのクラブで共通して重要視しているのは、『コミュニティー』でした。あるクラブでは、スタジアム内に、ホテル・地元企業のオフィス・レストラン・宴会場等が併設され、試合もないのに地元の人たちが楽しそうにパーティーを開いていました。

 また、あるクラブの練習場には、町の公民館の機能が併設され、ダンス・美術・パソコン教室を開催、カフェでは、サッカースクールで自分の子供を目で追うお母さんの姿がありました。どのクラブも、その規模に応じて、さまざまな形態でコミュニティーと密接な、つながりを持っているのです。

 このように、サッカーだけにとらわれずにサッカーを利用した、スタジアムやチームの練習場が、町のコミュニティープレイスとして機能を持つことができれば、そのクラブは、必然的に町の象徴となるのです。そして試合は、町の象徴vs象徴となることで、サポーターである町の住民は、わが町のプライドをチームに託し、住民は地域愛を確認できるのです。クラブはそのようにして町に必要不可欠な存在となっていくのです。

 もちろん、ザスパ草津も、多く方々にしっかりと認知され、皆さんの地域愛を託してもらえるチームにならなければなりません。クラブへの思いは多種多様です。ザスパ草津を思ってくれている人も増えました。その思いを裏切ることなく、私自身、前進していきたいと思います。『EVER ONWARD』。








(上毛新聞 2010年9月23日掲載)