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シネマテークたかさき支配人  志尾 睦子(高崎市八幡町)



【略歴】県立女子大卒。1999年から高崎映画祭ボランティアスタッフに参加。その後、同映画祭ディレクターとなる。2004年からシネマテークたかさき支配人。



コミュニティシネマ会議



◎地域との連携が不可欠



 去る9月10、11日、全国コミュニティシネマ会議が開催され、会場となった山口県へ行って来た。この会議は、さまざまな場で<映画を観(み)せること>を行っている人々の情報交換や研究討議の場として1996年から毎年会場を変えて開催されている。参加者は主にミニシアターを中心とした興行関係者や、公立の映画専門施設の関係者、公共ホール・美術館・図書館の映像関係者、映画祭や自主上映団体の関係者や、独立系配給会社の関係者などだ。映画上映と一口に言ってもそのかかわり方はさまざまである。

 私が高崎映画祭のスタッフになった次の年、当時は映画上映ネットワーク会議という名称で、高崎で5回目の会議が開催された。わけもわからないまま会議のお手伝いをしたのだが、映画上映の幅の広さやかかわり方の種別の多さにまず驚いた記憶がある。全国各地に散らばる人たちの活動は、問題点や課題は大枠では同じでも、対応策は各地の人口や環境や状況によって千差万別であることも驚きだった。情報交換や横の繋(つな)がりを構築することで全体の映画映像文化をつくりあげていこうという、全国の仲間たちの想(おも)いが強く感じられた。以来、遠方でもなるべく参加するようにしている。

 ホストの地は郷土愛を遺憾なく発揮し、その地の施設や自分たちの活動を全国の仲間に紹介することになる。参加する側にとっては、他の県はどんな街並みで、どんなふうに人々が暮らしているのかを垣間みながら、何が充実していて何が足りないのか、自分たちの活動との違いはどこにあるのかと諸処の課題を整理するよい機会となる。こうして育(はぐく)まれていったネットワークによってコミュニティシネマという活動構想が生まれた。全国どこにいても幅広く多種多様な映画を観られる環境を整えること、同時に芸術文化の振興、地域社会の発展に寄与していくことを目的とする活動だ。

 大都市で見られる映画の数を10とした場合、群馬は2と教えられたが、1に満たないところさえある。各地の状況を自分たちのことに重ねあわせていった結果、映画映像文化の発展と育成のためには官民一体となってこの問題に臨んでいかねばならないということで公共上映=コミュニティシネマ構想となり、上映者たちにとって一つの核となった。ネットワーク会議はその後、コミュニティシネマ会議と名称を変え、ここから発信された取り組みが全国各地で行われている。

 シネマテークたかさきも高崎映画祭もこのコミュニティシネマ活動の一つの形だ。映画を観る環境を豊かにすることは、地域との連携が必要不可欠であるから、そうしていくと街も人も豊かになると思う。さらなる充実と発展を目指して進んでいきたいと思う。







(上毛新聞 2010年10月10日掲載)