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群馬ダイヤモンドペガサス・ゼネラルマネージャー  根岸 誠(高崎市上中居町)



【略歴】新島学園高、青山学院大経営学部卒。元高崎青年会議所理事長。現在、高崎佐野中PTA会長、高崎マーチング協会副理事長。フジコー代表取締役。



市民球団の意義



◎地元文化発展の起爆剤



 NPB(日本プロ野球機構)で唯一、球団名に企業名を入れていない「横浜ベイスターズ」が揺れている。ベイスターズの親会社、TBSの身売り報道だ。TBSが球団を売却すること自体は、さしたる問題ではない。それ自体は、以前からうわさされていたことであり、近い将来に起こることは、容易に想像ができた。問題は、本拠地移転のうわさである。横浜からベイスターズが消える???

 全米で最も人気のあるNFL(アメリカンフットボール)では、チームオーナーは個人もしくは、個人の集合でなければならない。つまり企業がチームを所有し、その名をチーム名にすることが禁止されている。

 そうなると、巨額の投資を要するチームの所有は大富豪のみとなるのだが、NFLでとりわけユニークな経営形態を有しているのは、ウィスコンシン州の小さな地方都市にある「グリーンベイ・パッカーズ」である。

 パッカーズの本拠地グリーンベイは、住民およそ10万人程度の地方都市だが、1試合の平均来場者数は、何と6万人近くにも及ぶという。このパッカーズを所有するオーナーは、まさにグリーンベイの地域市民なのである。チームはこれまで、その所有権利となる株式を市民に対して、およそ474万9000株発行しており、名実ともに「市民球団」となっているのだ。

 チームの株式は未公開のため売買することはできない。また配当も存在しない。さらに株主だからといってチケットの値引きなど特別な優待も一切ないという。市民は純粋に「自分のチーム」を愛し、年1回行われる株主総会で、球団経営に関して積極的な発言を行うそうだ。当然、球団を運営するスタッフは、オーナーたる市民の熱意と愛情に応えるために、ファンサービスをはじめとした球団経営に没頭することが使命となる。

 「群馬ダイヤモンドペガサス」には、大富豪のオーナーも多数の市民オーナーも存在しない。存在するのは、地元の娯楽、文化発展の起爆剤となるべく「愛される集団」を目指して努力する関係者の情熱にほかならない。

 目先のことだけ考えて、集中的に資金を投入したり、特定の選手を引っ張ってくれば短期的には注目されるが、そうした手法ではチームは地域に根ざしていかない。球団はNPBプレーヤーだけでなく、メジャーリーガーになろうという人の夢をかなえるために、再チャレンジの場になることを明示して設立された。

 じっくりと「愛される存在」となる努力をすれば、パッカーズのような「おらほうの球団」となることも決して夢ではない。これから数年は、そのための土台づくり。そういう視点でチームを見守って頂きたいと思う。







(上毛新聞 2010年10月19日掲載)