視点 オピニオン21
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電通 メディア・プランナー  一文字 守(東京都品川区)



【略歴】高崎高卒。慶応大大学院修了。電通勤務。マーケティング、営業部門を経て、現在はメディア・プランナーとしてさまざまな広告主の広告計画立案に携わっている。


ライブのすすめ



◎日常から離れた世界に



 1年間にわたりお付き合いいただいた拙文であるが、いよいよ私自身の最終回を迎えた。最後に個人的な趣味について書いてみたい。

 私は自身のポリシーとして、スポーツやイベントを「生で見る」ことにこだわっている。仕事柄ということではなく、何事も現場が一番スリリングで一番楽しいと思っているからだ。

 舞台演劇や落語会へよく足を運ぶ。演劇はストレートプレイを中心に年に30本ほど見ている。そこで展開されるストーリーそのものもそうだが、役者の肉体的な表現力、工夫に満ちた舞台装置や照明、遊び心に富んだせりふ回し、圧倒的なライブの迫力がそこにはある。落語は寄席ではなく、お気に入りの噺(はなし)家さんたちの独演会に行っている。こちらも年に25本ほど通っている。落語の魅力は話芸と所作だけなのに、あたかもそこで物語が展開されているかのような錯覚に陥るところだと思う。想像力が刺激され映像が浮かぶのである。プロ野球も年に5、6試合ほど東京ドームや神宮球場へ見に行く。子供のころから阪神タイガースのファンである。サッカーは川崎フロンターレのサポーターで、年間指定席を購入しホームゲームは毎試合観戦している。過去には2006年のドイツワールドカップや08年の北京オリンピックの観戦にも出かけた。もちろん国内で行われた長野オリンピックや日韓ワールドカップ、大阪世界陸上などにも出かけている。

 私が携わっている「広告」という世界は「完全」を目指す世界だ。その商品をより魅力的に見せるために15秒のテレビCMにすべてをつぎ込む。できる限りきれいに、できる限り完ぺきに。クリエーターのこだわりも生半可ではない。一方で、世の中はちょっとしたズレが、違う展開を生む。仕事でもプライベートでも。私自身、あの時ああ言っておけば、ああしておけば、という後悔は枚挙にいとまがない。読者のみなさんも似たようなものであろう。スポーツの世界は当然のことながら、舞台も同様だ。普段「完全」を目指す所に身を置いているがために、予測のつかないドラマを求めて「ライブ」に惹ひかれるのかもしれない。

 今や群馬にもプロ野球チームや、プロサッカーチームが存在している。群馬を地盤にしている劇団もあると聞く。東京ほど多くはないにせよ落語会も時々開かれている。それだけではない。有名アーティストのコンサートもよく開催されているし、群響もある。ぜひ皆さんにもスタジアムやホールに足を運んで「ライブ」を体感してほしい。日常からちょっと離れた新たな世界がそこには待っているのではないだろうか。また、その現場に出ている看板やポスターなどを広告的視点で「裏読み」していただけたら幸甚である。








(上毛新聞 2010年10月22日掲載)