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石炭資源開発(株)取締役社長  鈴木 均(千葉県佐倉市)



【略歴】千葉市生まれ。東京大経済学部卒業後、東京電力入社。米国ワシントン事務所副所長、本店燃料部長、執行役員群馬支店長などを経て2007年から現職。



電源のベストミックス



◎安定供給へリスク分散



 光、力、熱…。その形はさまざまですが、電気は今や私たちの生活にとって、切っても切れない存在となっています。電気に色はついていません。しかし、電源別に見ると、水力、火力、原子力、風力などの“混成部隊”で成り立っているのです。

 現在の日本の電源構成はどのようになっているか、ご存じですか?ウエイト的には火力64%(LNG29%、石炭25%、石油10%)、原子力26%、水力8%、風力など新エネルギー2%の順番となっています。

 群馬では、電気というと水力を思い浮かべる方が多いようですが、水力は今や10%を切り、とっくの昔に、主役の座を火力に譲り渡しています。

 時系列的に見ると、日本の電源構成は大きく変化していることが分かります。9電力体制がスタートした1951年は、水力が8割強と圧倒的でしたが、60年に火力が水力を逆転し、70年からは、新たに原子力が戦列に加わってきました。さらに火力の燃料別に見ると、主役の座が国内炭↓石油↓LNG・海外炭に順次入れ替わっていることが分かります。

 「電源のベストミックス」という言葉があります。何がベストミックスかは議論の分かれるところですが、一般的に、いろいろな電源がバランス良く組み合わされているのが望ましいと言われています。

 その理由として、先ずリスクの分散ということが挙げられます。一つの電源に片寄り過ぎていると、何か大きなトラブルが発生した場合、即停電ということになりかねないからです。

 それから需給の変動に対応しやすいというメリットもあります。現在、原子力と石炭火力はベース電源、LNG火力はミドル電源、石油火力と揚水水力はピーク電源として位置づけられています。

 原子力や石炭火力は24時間、ほぼ一定出力で、ベースロードを担うのに対し、需要のピーク時には、機動性に優れた石油火力や揚水水力(深夜電力で揚水して昼間に起動)を立ち上げて対応します。

 電気の弱みは、大規模な貯蔵が難しいということです。そのため電力会社は、電力需要の変動に併せて、発電所の出力を調整する必要があります。その微妙な調整により、電圧や周波数を一定に保ち、需要家の皆様に、質の良い電気を安定的にお届けすることが可能となります。

 停電の時しか意識されない電気は、ふだんは空気のような存在と見なされています。しかしながら、実際は、多くの人々の力の結集によって、初めて安定的な供給が可能となっています。そのことを、皆さんに少しでもお分かりいただければ“電気君”としても本望ではないかと思います。






(上毛新聞 2010年11月19日掲載)