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なかや旅館社長  阿部 剛(みなかみ町湯桧曽)



【略歴】沼田高、新潟大経済学部卒。1994年に実家のなかや旅館に入り、98年から現職。著書に『1日10分!「おもてなし」ミーティングがあなたのチームを強くする』。


職場でのおもてなし



◎お互いに対し関心持つ



 「おもてなし」という言葉を目にし、「私には、関係がないな」と思われる方も多いかもしれません。

 確かにこの言葉は、私が関(かか)わる旅館業など、主にサービス業に深く関係するものですが、私がここでお伝えしたい「おもてなし」とは、ありとあらゆる職場・現場で必要とされているものなのではないか、と考えています。今回は、「職場でのおもてなし」について、お伝えしてみます。

 私たちの職場(なかや旅館)では、スタッフの誕生日をお祝いする、ということをやっています。それも、ただ単に決まりきった同じものをプレゼントするのではなく、お祝いされる人が喜びそうなものを、考えに考えて贈るのです。

 これまでの「実績」も、チーズ好きのスタッフには「“世界一臭い”チーズ」だったり、貧血気味のスタッフには「鉄分豊かなレバーペースト」を調理場に作ってもらったり…。どれも、それほど高額な金額を掛けずに、「思い=おもてなし」を届けています。

 9月に誕生日を迎えた私の父(当館会長)への、スタッフからのプレゼントが、爆笑ものの「傑作」でした。大の酒好きの父…そんな父に、スタッフがプレゼントしたのは、一升瓶の焼酎でした。しかし、この焼酎、ただの焼酎ではなかったのです。その銘柄の名前は、なんと「鬼嫁」!

 これは、父への同情(父の伴侶は、かかあ天下の群馬女=前橋出身です)なのか、「それ(鬼嫁)を飲み上げて(尻に敷いて)しまってください!」という励ましなのか…。プレゼントの真意までは、完全に汲くみ取れませんでしたが、とにかく、その時の職場には、スタッフ一同の和やかな笑いが溢(あふ)れていました。

 話は変わり、私の大学時代の親友が勤める会社(新潟市)は、この20年ほどで従業員数が5倍を超える急成長を成し遂げているそうです。しかし、彼が嘆くに、以前は終業後に、バスケットボールなどのレクリエーション&飲み会があり、この時間を通じて、他の人が、どんな奴(やつ)で、何を考えているのか、理解できたのだが、あまりに急激に社員が増え過ぎてしまい、社内のコミュニケーションが非常に難しくなってしまった、というのです。

 どんな会社、職場であれ、お互いに対して、良い意味での関心を持ち、人間として理解していくことは、良い職場をつくり出し、良い人間関係だけでなく、実務の上でも良い成果を上げることにつながると思います。

 これをお読みくださった会社の社長さん・複数の部下を持つ部長・課長・係長さん、あるいは学校の校長先生等も含め、お互いをよりよく理解しあうきっかけとして、「誕生日」を一つのチャンスに考えてみるのも面白いかもしれません。








(上毛新聞 2010年11月23日掲載)