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ピアノプラザ群馬代表取締役  中森 隆利(高崎市問屋町西)



【略歴】静岡県磐田市出身。高崎経済大経営学科卒。家業の日本シュバイツァピアノで経営と技術を学び、1974年、ピアノプラザ群馬を創業。群馬交響楽団運営理事など。


ウィーン詣で



◎人集う街の構造が魅力



 10月下旬、ウィーンに出かけた。今年はこれで2回目。ほとんど毎年のように行っているので、通算すると20回ぐらいになる。「同じ所ばかりになぜ行くのか」とよく聞かれるが、魅力があるからとしか言いようがない。

 好きな音楽や美術があふれ、歴史ある建築もさまざまな様式が見られる。しかも、これらがいつ行っても時間や季節に関係なく一体となっていて、行くたびに新しい発見や深い感動が味わえる。

 今回は、1991年に設立された群馬日墺(にちおう)交流協会の16回目の旅行の一員として出かけたため、一人旅とは違って宿泊や移動もお任せで、余裕を持って街を歩くことができた。

 昼は美術館や宮殿などの見学、夜はコンサートや、ワインケラー(酒場)での飲食を楽しんだ。考えてみると、ここでは今まで車やタクシーをほとんど使ったことがなく、市内は歩きと路面電車と地下鉄だけですべて間に合ってきた。

 街の中心にはシンボルである教会と広場、その周りにさまざまな商店が並び、その外側のリンクと呼ばれる道路には路面電車が走る。それに沿ってオペラハウスやコンサートホール、美術館、市役所、大学などが立ち並んでいる。

 この中で生活やショッピング、カルチャー、飲食などのすべてが充足されてしまう。ヨーロッパの都市に見られる街の中心に向かってすべてが完結する構造は何といっても便利で、多くの人が集まり、楽しい。

 人が集うといえば、会うためにコンサートに出かけるという文化がある。重大な用事の場合はともかく、ほとんどの用事は10分程度で済んでしまうのではないか。この程度の用事でもいざ会うとなれば、電話で約束を取りつけたり、手土産を用意したり、気を使うことが多い。

 その点、コンサート会場で会えれば、心地よい音楽の間の休憩などは最高のタイミングで、面倒な話も簡単に済む。内容によってはワインとともに歓談すれば、大抵は解決し、話に詰まったころには開演のブザーが鳴るタイミングの良さ。もちろん、話が弾めば、終演後に別の場所に移動の約束も可能で、こうなれば音楽はさらに心地よく響く。

 この仕組みは長い時間の中でできたものだが、日本で問題となっている中心市街地活性化や公共交通問題の解決のヒントも多く含まれている。実際にこれを国内で再構築するのは容易ではないだろうが、コンサートで人と会うという文化は群馬でも根付きつつある。 群馬交響楽団の定期演奏会に行ってみると、いつも来ている顔ぶれが多く、この時には必ず会える人たちがいる。私にとっても得がたい場所である。多くの人がこのようなチャンスを生かさない手はないと思う。








(上毛新聞 2010年11月28日掲載)