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ステージサービス群馬社長  添川 秀樹(前橋市富士見町石井)



【略歴】早稲田大社会科学部卒。日本ホールサービス取締役群馬支社長を経て現職。現在、社団法人企業メセナ群馬理事。群馬楽友協会理事(事務局長)。


公会堂から劇場へ



◎法制化の機運高めよう



 地方自治体が私たち住民の福祉を増進するために、いわゆる公の施設として設置してきた市民会館や文化会館という公立文化施設は現在、全国で2100ホールを超えました。立派な施設が私たちの身近にあります。

 読者の皆さんは、この身近な施設に年に何回くらい足を運ばれていますか。そしてその目的はどのような事でしょうか。多くの方々は観劇や聴衆として来館され、時には発表会に出演されていると思います。

 出演されたことのある方はお分かりになると思いますが、これらの文化施設で上演される出し物の多くは、そこで創(つく)られていないことがほとんどです。大都市のスタジオで制作されたもの、教室や公民館、あるいは自宅で仕上げたものが文化施設で上演されてきました。そうです、公立文化施設は発表や公演の場として機能しております。

 国の文化政策として多数の人が集う施設は、上演の場として機能するものと想定されてきました。その先駆けが財界人の寄付によって建設され1918(大正7)年に開館した中之島公会堂です。

 しかし現在、これらの公立文化施設を規定する法律はありません。図書館や博物館など他の文化施設を規定する法律は既に整っていますが、劇場や音楽堂を規定する法律がありません。もとより、音楽堂の建設には建築基準法が適用されますし、消防法、労働基準法などはここでも適用されております。

 国は2001年に文化芸術振興基本法を制定し、その第25条で劇場、音楽堂等の充実に必要な施策を講ずることを規定しました。この基本法の理念を具現化するため、いわゆる劇場法制定の機運が盛り上がっており、舞台芸術の専門家や関係団体からは研究成果の発表や法制内容への提言が活発に公表されております。

 劇場法(仮称)に関する最も総合的で革新的な議論を展開しているのが芸団協(社団法人日本芸能実演家団体協議会)です。その論旨を端的に申せば、専門家が配置された劇場を整備しようというものです。全国の公立ホールを「創るためのホール」「観(み)るためのホール」「交流のためのホール」の三つに階層化して、創るためのホールには経営責任者、芸術責任者、技術責任者を配置。ここでは創造することを本来の「劇場」と定義し、単に上演場所という従来の公立文化施設と区別しております。

 この構想(階層化)がそのまま法制化されるかは分かりませんが、全国で30~40ホールと想定されている「劇場」には県内のどのホールが指定されるのか、その他のホールはどの様になるのか。

 身近な文化施設の法制化に向けて、皆さんで考える機運が盛り上がってほしいと念じております。








(上毛新聞 2010年12月1日掲載)