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大妻女子大教授  干川 剛史(神奈川県相模原市)



【略歴】前橋市生まれ。慶応大大学院修了。阪神・淡路大震災から情報ボランティアを実践する。徳島大助教授を経て、現在、大妻女子大教授、日本災害情報学会理事。


災害と情報ボランティア



◎政府が派遣予算措置を



 群馬県庁のホームページの「群馬県の防災ページ」を見ると、「浅間山の噴火情報」や「最近の災害に関する情報」等きめ細かい災害関連の情報が掲載されている。

 このように、地方公共団体がインターネットを通じて災害情報を発信するようになったのは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災からである。

 この震災では、神戸市がホームページに市内の被災状況等の情報を掲載して、世界に向けて情報発信を行い、海外から多くのアクセスがあった。

 筆者は震災当時、教官として徳島大学に奉職しており、地震発生直後から、研究活動としてパソコン通信を通じて被災地の情報を収集していた。だが、徳島から一番近い被災地である淡路島に関する情報が皆無に等しいことに気づき、自ら現地に入って「情報ボランティア」としてパソコン通信とインターネットを通じて情報発信を行うことになった。

 それ以来、災害が発生するたびに、被災地内外で情報ボランティアとして、インターネットを活用して被災者や支援者が必要とする情報を収集し提供してきた。その詳細は、拙著『災害とデジタル・ネットワーキング』(青山社2007年)などの著書で論じている。

 最近の筆者の活動としては、「平成22年台風9号」によって今年9月8日に被害を受けた静岡県小山町での被災家屋被害調査の仲介支援と「eコミュニティ・プラットホーム」(http‥//jpgis.jp/index.php?gid=10015)を活用した被害状況の情報収集・発信がある。

 その際に、筆者は「平成21年台風9号」によって昨年8月9日に被害を受けた兵庫県佐用町の役場でeコミュニティ・プラットホームを活用した「罹災証明発行支援システム」の開発・構築に携わった経緯から、佐用町から小山町への被災家屋被害調査に関する支援の仲介をするという形で小山町役場の支援を行うことになった。

 しかし、残念ながら、佐用町が小山町から遠方にあるという理由で、小山町からの佐用町に対する職員派遣要請が見送られ、電話や郵便、電子メールを通じた支援にとどまった。

 そこで、すでに政府機関で検討が行われていると思われるが、災害時の地方公共団体間の支援を確実かつ効果的に行うためには、筆者のような個人がボランティア的に仲介するのではなく、政府が、災害対応経験のある地方公共団体の職員の派遣費用を含めた予算措置を講じた上で、被災した地方公共団体に対する支援制度として仲介を行うべきであろう。








(上毛新聞 2010年12月4日掲載)