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公立富岡総合病院看護部副部長・がん看護専門看護師  
                            清水 裕子
(高崎市稲荷台町)



【略歴】前橋市出身。病院で看護師の実務経験を積んだ後、北里大大学院看護学研究科修了。2006年、県内初のがん看護専門看護師の認定を受ける。



がん専門看護師の役割



◎看護の質 向上に努力



 皆さまは、がん看護専門看護師という名前を聞いたことがありますか? 私が4年前にこの認定を受けた時には県内第1号でした。それから現在までの間に、県内の施設に勤務するがん看護専門看護師は8人になりました。少ない人数のようにも感じますが、全国で193人、16県がいまだゼロの状況であることを考えると、群馬県、群馬大学ががん医療、がん看護にどれだけ力を入れているかおわかりいただけると思います。

 専門看護師は日本看護協会が認定する資格であり、医療が高度化・複雑化していく中でより良い看護を提供することを目的に、1996年に制定されました。看護師として患者・家族へ直接ケアを行ったり患者の意思を尊重するよう働きかけたりするだけでなく、看護師の相談にのったり、他の職種との調整を行ったり、また看護師への教育や看護分野の研究を行うことが役割として挙げられます。さらにこれらの役割を統合し、看護の質の向上を促すという大きな役割が求められています。

 日本人の3人に1人はがんで死亡する時代と言われ、がん=(イコール)死というイメージがありますが、全悪性新生物(いわゆるがん)における5年生存率は長くなってきており、がんとともに生きる人は増えています。がんの告知が進み、治療方法や療養場所なども患者・家族が選択できるようになった半面、その選択に悩む患者・家族がいます。また常に再発・転移の不安を抱え治療を続けながらも社会生活を送る患者も多くなっています。テレビで芸能人ががんになったことを公表するのを聞きながらも、「がんになったことを誰にも言えない」とつらい胸の内を語る患者もいます。専門看護師は、そのような患者・家族に寄り添い、対話を続け、尊厳を守りながら患者・家族が自分らしい人生を過ごせるように援助を行い、さらに全体の看護のレベルが向上するようそれぞれの施設で取り組んでいます。がんが身近な病気になった今、患者・家族にとっても、医療者にとっても、がん看護専門看護師の存在は必要だと自負しています。

 昨年から月1回、土曜日の午後に県内のがん看護専門看護師、専門看護師候補生(大学院修了者)での学習会を始めました。会では、専門看護師候補生が認定試験を受けるためのサポートを行ったり、患者・家族へ提供した看護の振り返りを行ったり、あるいは病気やその治療の学習をしています。しかし一番の目的はがん看護専門看護師としての成長であり、皆さまからがん看護専門看護師が必要とされるように努力していきたいと考えています。








(上毛新聞 2010年12月8日掲載)