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みどり市観光ガイドの会会長  松島 茂(みどり市東町)



【略歴】旧勢多東村出身。城西大卒。両毛建材社長を経て2005―09年、わたらせ渓谷鉄道社長を務めた。今年7月に発足したみどり市観光ガイドの会の初代会長。


観光ガイド



◎自身も楽しんで同行



 遅ればせながらではあるが、群馬デスティネーションキャンペーンを来年に控え、みどり市にも観光ガイドの会が今年7月に発足した。

 私は以前旅行をした際に、観光ガイドの方の案内で観光をする機会が度々あった。その土地の方が、その土地の言葉で案内をしてくれることに大変感銘を受けていた。そしていい旅の思い出として残っている。

 「観光」と言う言葉は、その土地の光るものを観(み)ることだという。「観」には心をこめて、誇りを持って見るという意味があり、「光」は優れたものないし特色を意味するという。土地、土地の光るものを観るには欠かすことのできないのが、その土地の光る人たちであると感じていた。

 観光ガイドは歴史の先生ではない。自分の地域を生の声で、自分の体験を語ることができる人であると思う。以前、日光市足尾町で、足尾銅山のガイドをしていただいた時のことである。同行していた一人の女性が、ガイドさんに道端に咲いている花の名前を尋ねた。「ごめんなさいね。私、花の名前よく分からないんですよ。私の子供の頃、足尾では花は咲かなかったからね」。栃木なまりの言葉でそう答えてくれた時に、私は銅を精錬する際に発生する亜硫酸ガスによっておびただしい自然破壊を受けた足尾の山々、そして街並みの姿を思い浮かべることができた。まさに生の体験であり、歴史の語り部であると感じた。

 今、仲間と共に観光コースづくりを進めている。みどり市は2町1村が合併してできた新しい市である。主なコースは、笠懸町の「岩宿の里コース」、大間々町の「蔵の街並みコース」、東町の「あかがね街道コース」、袈裟丸山などの「山岳コース」が考えられている。自分の地域以外のことを知ることで、新市の一体感にもつながっている。

 私は自らの地元コースづくりをする際に多くのシルバーパワーに支えられている。銅蔵を先祖代々守り続けている方、偉人の生家を保存、管理している人たち、自宅を開放し古美術品、民俗史料を展示している方、等々。観光コースをより魅力的なものにしてくれているのは、地域の伝統文化を守り、地域を愛するそこに根付いた地域力であると感じている。

 これから私たちがどこまで観光客の皆さんに喜んでもらえるガイドになれるかは未知数であるが、私はいつも仲間に伝えていることがある。それはまず自分自身が楽しんでガイドをやって行こうということ。思いは言葉の端々で相手に伝わって行くからである。

 若い時に覚えた、初めての人と出会う時のドキドキ感。そんな思いに近いドキドキ感を持ってガイドに臨みたいと思う。その日が楽しみでならない。







(上毛新聞 2010年12月14日掲載)