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神流町恐竜センター学芸員  佐藤 和久(神流町神ケ原)



【略歴】埼玉県出身。千葉大卒。モンゴルでの化石発掘を機に不動産会社を退職。1999年から恐竜センターに勤務。2003年には、学芸員の資格を取得した。



恐竜発掘ツアーで学ぶ



◎ひらめいたら行動を



 現在、神流町恐竜センターで学芸員として働いているが、そのきっかけとなったのが、1996年夏に行われた1週間のモンゴル恐竜発掘ツアーである。新聞広告に掲載されたこのツアー、子どものころモンゴルで恐竜発掘をしたかった私にとっても、すばらしい企画だった。ただ、そう考える人も多く、相当数の応募があったと記憶している。

 ただし、問題点が二つあった。当時勤めていた会社の1週間の夏休みと7回あるツアー日程が合うか、それと約60万円もかかる高額なツアー料金を払えるかであった。

 しかし、運良く夏休みと重なるツアーに参加できるようになったこと、貯金を全部集めれば払えるようになり、これが生まれて初めての海外旅行となった。

 実はこの時、モンゴル恐竜特別展を開催中の中里村(当時)から小学校の校長先生も一緒に参加され、あるメディアがツアーに同行していた。取材がてら校長先生から特別展や中里村のことを詳しく聞いたが、その後中里村で仕事をするとは当然思いもしなかった。

 さて、発掘現場は、なだらかな丘が続き、東に湖がある場所である。初日モンゴルの研究者が現場の地層や化石などに関するレクチャーをした後、たった3日間の発掘作業。とにかく現場は広く、ひたすら歩いて探す。気温は35度くらいまで上がり、定期的に水分補給をしないと、脱水症状に陥る。そんな厳しい環境の中、最初は化石と石の区別すらつかず、思うような成果はなかった。

 そうこうしているうちに最終日となり、ある大学生が角竜のプシッタコサウルスを見つけ、取材を受けていると聞き、「すごいなぁ」と思っていると、モンゴル人スタッフが斜面にいた私に「これ、化石だよ」と教えてくれた。と、その時、ふとひらめいた。化石は確かに地面に埋もれているが、やみくもに掘っても出るはずがない。化石の一部が出ていそうな場所を探せば、見つかるはずだと。

 そうなればあとは行動するのみ。すぐに丘の高いところに登り、雨で土砂が流され、沢状になったところを探す。そして、気になる一つの沢を下りていくと、ちょっと崩れたところに骨状のものを発見。これは化石だと確信できたので、研究者を呼んで、確認してもらうと、プシッタコサウルスだと判明。そして、研究者と一緒に掘り進めると頭もあり、研究者も大喜びであった。このことは大学生を取材していたメディアにも伝えられ、生まれて初めて取材を受けた。これを契機に、中里村と深く関わっていくのである。

 最初思うようにいかなくても諦めずにやり続けること、そして続けている中で気づきひらめいたらすぐに行動すること、それが大事だと実感したのである。









(上毛新聞 2010年12月22日掲載)