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ライフ・プランニング・センター「新老人の会」群馬支部事務局長  
                              吉江 福子
(前橋市上小出町)



【略歴】旧吾妻町出身。渋川女高、昭和大薬学部卒。薬剤師。介護支援専門員。病院や福祉施設、調剤薬局に勤務し、「新老人の会」群馬支部事務局長として活動する。


「新老人の会」から(1)



◎「模擬患者」の育成を



 「新老人の会」は、10年前に聖路加国際病院理事長の日野原重明先生が、75歳以上で元気で自立している人のために作りました。その後、75歳以上をシニア会員、60歳から74歳までをジュニア会員、20歳から59歳までをサポート会員として、「命の大切さを考える」「自分の健康を守ること」「世界平和を願うこと」などをテーマに活動、交流していこうという会に発展していきました。

 その中で、たまたま会員だった私に群馬支部作りができないかという話があり、2008年7月に25番目の支部として立ち上げました。

 日野原先生は今年10月4日に99歳になられました。先生の有名な話として、新幹線のホームに上がる時にエレベーターを使わず歩き、エレベーターを使う人より早く上がった時に「やったー」と心の中で歓声を上げるという話があります。私の経験でも、日野原先生の足が早いため、先生と話をして、もう一度話そうとすると、もうはるか先に行っていたり、本部のある砂防会館の1階から5階まで歩いていかれる先生を見たりと、驚くことがしばしばありました。「年を重ねての健康は足から」という言葉がありますが、それは確かなことのようです。

 私は薬剤師として、毎日多くの患者様とお話ししながら「人の健康について」考えることがあります。つまり「心と体の健康は何か」ということです。99歳まで目標を持って働く日野原先生を見ていると「生きがいを持つこと」の大事さをあらためて感じます。では私なりの「今の目標は?」と聞かれると、今は薬剤師として役に立つこと、そして支部活動として、群馬での「模擬患者」の育成にあると思います。模擬患者は、医学部・歯学部・薬学部の進級試験の中で活動するために始まったもので、アメリカでは早くから導入されました。日本での導入については日野原先生が一番早くに提唱されました。日野原先生は患者さんの心の分かる医療人が育っていくこと、つまり医療コミュニケーションが大事であると言われました。実際に私の仕事場でも患者様との意思疎通がうまくとれることで治療効果が上がると感じます。

 「新老人の会」本部ではすでに100人以上の模擬患者が活躍し、模擬患者自身の生きがい作りでも実績を上げています。私は群馬県においても同様に模擬患者が育っていくように願っています。

 日野原先生は、著書『生き方上手』の中で「いくつになっても新しいことを探していく生き方」を示してくださいました。そのような日野原先生の教えを皆さまにご紹介できればよいと思っています。







(上毛新聞 2010年12月27日掲載)