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藤岡北高教諭  中尾 徹也(藤岡市牛田)



【略歴】藤岡市生まれ。東京農業大農学部卒。1995年、県の農業教員として採用され、伊勢崎興陽高に赴任。その後、富岡実業高を経て、昨年から現職。


日本農業を守るために



◎教育現場でも対策を



 県総合教育センターが行う研修制度の一つに長期社会体験研修がある。教員が1年間学校現場を離れ、民間企業等で、幅広い視野や効率的な業務推進の視点等を身に付け、学校や地域における指導的役割を担うことのできる教育活動の推進者を育成するために、社会体験を通して経営理念、業務改善および企業の組織運営などを学んでいる。

 私は、農業の教員として、先進的な農業技術や農業経営を体験して、これからの農業高校の教育活動に活いかせればとこの研修に応募した。1年間研修を受けた農業法人では、放し飼いによる自然卵や高品質のキウイフルーツ栽培、地元野菜の漬物やカット野菜、下仁田ネギの受託販売と幅広い農業経営で持続的な経営とリスクの分散を行っていた。その経営には取引先や消費者の視点に立ち、細かいニーズに応え、信用と信頼を得ることにより、得意先とリピーターを獲得し販路拡大につなげるという経営戦術があった。

 このように産業としてとらえた農業の現場は、現在の厳しい社会情勢のなかで信頼される農産物の提供と持続的な経営を目指し、効率的かつ組織的にコストの低減や販路拡大、商品開発など先験的な視野においてさまざまな企業努力を行っている。

 いま、日本農業は、食料自給率の低下、農業従事者の高齢化による担い手不足、荒廃遊休農地の増加、食の安全性などさまざまな問題に直面している。これらの日本農業を取り巻く諸問題の解決には、生産現場の努力だけで乗り切ることは難しいであろう。

 諸問題の解決への取り組みとして、農業にかかわる生産や流通、環境保全を行う経営体の持続的な経営を視野に入れた行政の抜本的な施策はもちろんのこと、教育現場でも農業の重要性と食料に関心を持たせる授業や幼少期からの食農教育の実践など幅広い視点からの対策を行う必要がある。

 国民の信頼できる食料確保、環境保全等の多面的な機能を考えると、日本において農業は絶対になくすことのできない重要な産業である。だからこそ今、早急の解決が求められる。

 私は、これからの農業を担う農業高校生に、産業としての農業の魅力とチャンスある産業であることを伝え、農業従事者の増加や生産現場の活性化をめざし、元気と笑顔のある農業経営体につながる教育活動を行わなくてはならないと考える。そして、目まぐるしく変化する社会情勢や経済状況のなか、迅速かつ大胆に挑戦し続ける日本農業の後押しができるよう、農業高校においてもスピード感のある生産現場と一緒に走り続けることのできる力を付け、地域をリードする力強い農業経営者を輩出できるよう人材の育成に取り組んでいきたい。







(上毛新聞 2010年12月30日掲載)