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わたらせフィルムコミッション(WFC)代表  長谷川 博紀(桐生市東)



【略歴】三重県出身。1998年に森秀織物入社。現在、同社社長。元桐生青年会議所理事長。2010年4月からWFC代表として映像作品製作の支援活動に取り組む。


桐生のまち



◎魅力信じて夢実現へ



 桐生というまちは魅力のあるまちで、とても住みやすい。人口が減少しているのは全国的な現象であるが、まちの規模というべきか、生活エリアが密集していて快適である。

 もちろん、これは私の主観なので異論のある方もいるとは思うが、近年に見られるような郊外型店舗の影響によって、中心商店街の空洞化や生活エリアの拠点が移りつつあるのは間違いない。それでも他の地方都市と比べれば、まだまだ中心地に活気が残っているし、過去の勢いはなくても、生活拠点としての機能は十分残されている。

 まちの中心がこの辺りであると誰が見ても分かるし、商店の方々もさまざまな工夫で活気を取り戻しつつある。長年の歴史に培われたまちの人々のプライドもあって、まだこのまちにはマンパワーでの元気が残されていると感じている。

 それでは、これからの地域に必要なものは何かと問われれば、さまざまなキーワードが出てくる。観光・産業・教育などの集客、誘致を行政とも一体となって進めてはいるが、それだけではなかなかうまくいかない。群馬県の中で比べてみても、残念ながら桐生地域の立地条件など、産業の誘致を図れる優位性は少ない。観光というキーワードも、そこに関わっている身として感じるのは、普通のこと、つまり他のまちと同じことをしてもうまくいかないといえることだ。

 このまちにしかない魅力を生かしたまちづくり、そこに行政の後押しと、市民の理解、そしてそれが自然に発信されていけば、観光・産業の発展におのずとつながるものと考える。観光用のパンフレットを作っても、対象者がいなければ何もならない。このまちに魅力や興味を感じる人々が観光客にも、移住者、定住者にもなりうるものである。

 桐生では、残された数々の文化遺産、産業遺産を生かしたまちづくりが行われている。のこぎり屋根を織物工場や倉庫としてだけではなく、おしゃれなパン屋さんや美容院、和菓子屋さん、洋菓子屋さんなどにも―。またイベントスペースの利用から、店舗として活用する方法が根付きつつある。パン屋さんの成功事例が、もっともらしいコンサルトより説得力を持って受け入れられた証拠である。

 ここからの成功へのピラミッド建設は加速していくだろう。産業遺産でありながら、使われていなかった、生かされていなかったのこぎり屋根が一気に脚光を浴び、まちの人々も違う目で見つめ直すと思われる。観光や文化発信の拠点としてしか捉えられていなかった建物が、産業観光・ビジネスの対象としてももてはやされる可能性に期待できる。そこに住む者が自分のまちの魅力を信じて、期待しなければどんな夢物語も実現することはないと考える。







(上毛新聞 2011年1月1日掲載)