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◎郷土愛に応えることも 私が店長を務める「ぐんまちゃん家」は東京・銀座にある。いわゆるアンテナショップである。「ぐんまちゃん家」にはさまざまなお客さまが来店される。群馬県とは縁もゆかりもないお客さま、近々群馬県を訪れるご予定のお客さま、口コミで人気の商品をご購入されるお客さま、群馬県出身のお客さまなどなど。アンテナショップとしては、ご来店目的に適した接客を心掛けているつもりである。 そんな中、ある一組のお客さまと特に懇意にさせていただいている。そのお客さまは群馬県出身で、現在は東京に住んでいらっしゃる年配のご夫婦である。無口なご主人さまはお酒が大好きで、店内にある冷蔵庫の地酒を選ぶのが楽しみとおっしゃる。奥さまは野菜販売の予定表をご覧になって足を運んでくださり、いつも笑顔でお声をかけていただいている。子育てが終わり、ポッカリ穴が開いたご夫婦の心象に、僭越(せんえつ)ながらわが「ぐんまちゃん家」がどっかりと居座っているように見受けられる。 アンテナショップの使命は、当然のことながら一人でも多くの方々に群馬県をアピールし、群馬県の産業の発展に貢献することである。そうであれば、群馬県の出身であり、既に群馬県の良さを十分に理解されているご夫婦は、「ぐんまちゃん家」の使命とは少し距離のあるお客さまのように思われるかもしれない。しかしである、都会の喧騒(けんそう)の中で長年生活をされてきたご夫婦にとって、自らを育んだ群馬県は懐かしさと愛情に満ちあふれる郷土である。その郷土愛は、異郷の地で生活する者にしかわからないものがあるように思える。ご夫婦にとって「ぐんまちゃん家」は、ご自身のアイデンティティーを確認する格好の場所なのではないだろうか。 東京およびその近郊にどれだけの群馬県出身者が生活しておられるのかはわからない。しかし、群馬県を離れ、都会で生活されている多くの方々が、群馬県への郷土愛を持っておられることは間違いないであろう。「ぐんまちゃん家」には、アンテナショップ本来の機能だけではなく、こうしたお客さまの郷土愛にも応える責務があるのではないだろうか。そう思うと、ご来店されるお客さまの出身地が気になって仕方がない。お客さまとのさりげない会話の中から出身地を探求し、その結果を接客に活いかすことが楽しい日々である。この紙面を御覧になった群馬県出身の方々、ぜひ「ぐんまちゃん家」にお越しください。郷土の誇るすてきな物品とともに、最高の接客でお迎えさせていただきます。 (上毛新聞 2011年1月3日掲載) |