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生花店 有花園専務取締役 亀田 慎也(高崎市上和田町)



【略歴】高崎高、早稲田大教育学部卒。1998年から家業の生花店で働き、高崎青年会議所の活動にも携わる。高崎田町屋台通りを応援する「旦那(だんな)衆の会」代表。


行政への市民参加



◎自治のあるべき姿



 行政への市民参加が言われて久しい。高崎市でも総合計画や自治基本条例の制定過程で、公聴会や対話集会など市民の声を聞く機会を増やしている。社会の課題が多様化する現在、行政側からの見方だけで物事を判断するのではなく、市民自らが考え、意見を出し合う仕組みは今後ますます重要な役割を担っていくだろう。

 こうした流れの中で本年8月、高崎市と高崎青年会議所が実行委員会を組織し「たかさき市民討議会」を開いた。無作為に選ばれた市民が、ある課題について専門家から詳しい情報提供を受けた後、5人程度のテーブルに分かれて話し合い、まとめたものを発表。それらの提案に対して投票する流れになっている。

 2日間行われ、5回の討議を行う。それぞれの討議テーブルはその都度メンバーが入れ替わるため、偏りのない意見集約が期待できる。出された意見は行政課題解決の参考とされ、その後の施策に生かされることとなる。市民討議会自体の詳細は省くが、ここでは参加者の意識の高さをぜひご紹介しておきたい。

 開始早々は初対面であるためやや緊張気味で言葉少なではあるが、討議を重ねていくうち、次第に身を乗り出し、模造紙に討議内容を書き込んでいく。ルール上他人の意見を否定しないことになってはいるが、5人一組ほどで討議を進めていくと、自然と他の意見に耳を傾けるようになる。それが、自分の意見と食い違ったとしても互いに一致点を見つけて合意を見いだそうと努力をしていく意識が生じてくる。

 声の小さかった参加者も意見がくみ取られることが分かりだすと次第に討議に加わっていくようになる。「声なき声を吸い上げる」と言われるゆえんだ。こうして終盤にはサポートの進行役がなくとも討議を進められるようになる。

 住民参加の意義はこうした市民の意識向上にポイントがあるように思う。従来の公聴会等では市民の「要望」を聞くことに重点が置かれてきた。しかしこれからは市民も主体的に行政課題の解決方法を模索し、提案できる形を整えていくべきであろう。

 そうした市民の意識向上からNPOや公益法人等の芽が育ち、さまざまな社会課題に対し、行政だけに頼ることなく、社会を構成する一員として、その役割を果たせるようになる。具体的に力を出せなくとも、寄付という形で貢献することもできる。さらにこうした寄付を納税の一部として控除の対象とすることで資金の流れをサポートすることができるだろう。

 行政への市民参加意識は想像以上に高く、行政と市民の立ち位置は意識の上では大きく変化を遂げていて、これこそが自治のあるべき姿であろうと実感させられるのである。






(上毛新聞 2011年1月7日掲載)