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スポーツコーディネーター  藤口 光紀(東京都大田区)



【略歴】旧粕川村出身。慶応大卒。サッカー日本代表、浦和レッズ社長を経て、現在日本スポーツコミッション評議員、日本サッカー協会参与、新島学園短大客員教授。


Jリーグが貢献したもの



◎芝生文化の醸成を推進



 昨年12月4、5日に、第11回全国シニア(60歳以上)サッカー大会関東予選会が千葉県の市原スポレクパークで開催され、東京都シニア60のメンバーの一員として参加した。本大会は関東地域のオーバー60の優秀チームと2011年全国シニア大会代表チームを選出するとともに、健康維持と関東各都県との交流を深め、生涯スポーツとしてサッカーの仲間作りを図ることを目的としているものである。

 本大会に代表されるように各地でいろいろな大会が開催されており、多くの元気なシニアプレーヤーが参加し熱戦を繰り広げている。今、シニアサッカーが熱い。われわれの子供のころは野球世代で、サッカーをしている人は少なく珍しかったが、現在これほど多くの人たちがボールを蹴っている光景は驚きであり、サッカーを愛する者からすればうれしくもある。

 新しいスポーツ文化Jリーグは1993年5月に開幕して、18年を経過した。豊かなスポーツ文化の振興や国際社会における交流や親善等につき貢献してきたが、最も貢献したのが芝生文化の醸成だろう。昔の芝生は冬になれば枯れて茶色くなるのが当たり前だが、それでも土ではなく芝生があれば喜んでボールを蹴っていたことを思い出す。現在は一年中あおあおとしたピッチが増えてきている。Jリーグが開催されるスタジアムのピッチはとりわけ美しい。世界の中でも日本の芝生のクオリティーは一番高いと思う。実際にFIFA(国際サッカー連盟)からも高い評価を受けている。

 Jリーグが立ち上がり、事業として成り立つようになると、芝生の研究開発が加速され、四季がある日本においてもシーズンを通して常緑の芝生が現実のものとなってきた。日本の研究開発力、技術力の高さをあらためて感じる。芝生は生き物であり、その土地の気候、土壌、使用方法・頻度等さまざまな条件が異なる環境での維持管理方法も非常に重要な要素であることは言うまでもない。設置・管理・使用三者の気持ちが通じ合った時に素晴らしい環境が生まれるのである。

 シニアプレーヤーが子供のように活(い)き活きとボールを追いかけている光景は、芝生文化の醸成と密接な関係がある。私も現役の時には体験できなかったような素晴らしい芝生のピッチの上で、ボールを蹴ることができる喜びを体感し、環境整備の重要性をあらためて感じている。

 子供に「体を動かしなさい」「スポーツをしなさい」と言ってもなかなか動きだそうとしないが、目の前に芝生の広場があれば、自然に走り回り、転げ回り、仲間たちと遊びだすようになる。人が人らしく生きることができるハード・ソフト両面での環境整備こそ社会の大きな役割であろう。






(上毛新聞 2011年1月9日掲載)