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アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」社長  小橋 研二(みなかみ町小仁田)



【略歴】岡山県生まれ。1996年、アウトドア・ツアー会社「カッパCLUB」設立。ラフティング・ツアーをはじめ、スポーツイベントの企画運営、開催を手掛ける。


アウトドアの魅力



◎好奇心を満たす自然



 近年、アウトドアを目的にみなかみ町を訪れる観光客が急増しています。1994年にこの地でラフティングツアーが始まった当時、全体の参加者数は数千人程度でした。それが2010年には、みなかみ町でアウトドアツアーを体験された方は十数万人に上ると推計されます。

 ここでは、ラフティング、キャニオニング、バンジージャンプ、カヌー、パラグライダーなど多様なアクティビティーを楽しむことができます。冬になると、スノーシュー、バックカントリー、エアーボードといった、新しいウインタースポーツの発信地としても、注目を集めています。

 このように多くの人がアウトドアを求めてやってくる地域へと発展した理由は、自然環境の秀逸さにほかなりません。山間部に降る多くの雪が、美しい森や渓谷、川を創造し、四季折々に表情を変える遊びのフィールドを提供してくれます。首都圏からわずか2時間でありながら、これほどさまざまなアウトドアの選択肢が凝縮してそろっているロケーションは、国内でも珍しいでしょう。

 人々はその自然の中での活動に、都会では味わえない非日常を求めてやって来ます。無機質な空間との対極に、癒やしを感じているのです。中にはアウトドアの虜(とりこ)になり、年間30回以上も通い詰めるリピーターもいるほどです。

 実は私も20代のころに、東京から車を走らせて週末ごとに通っていました。そして30代半ばで、アウトドアの素晴らしさを人に伝えることを仕事に選び、みなかみ町へ移住してきました。ここで働くアウトドアガイドは約300人いるのですが、ほとんどが地元出身者ではなく、他の地域から移住してきた人々です。オーストラリアやカナダ、ブラジルといったアウトドア産業先進国から移住してきた人もいます。彼らの多くが、ここを定住の地と決め、結婚をして子供を授かり、その子供たちは地元の学校に通っています。

 ここ数年、みなかみ町の新生児の1割が、アウトドア関係者の子供だというデータもあります。少子化や若者の流出が地方の大きな問題である今、アウトドア産業を発展させそれに携わる若者を呼び込むことは、高齢化を食い止める手段の一つとして有効だと思います。

 地元で生まれ育った子供たちが、アウトドアガイドを将来の職業として選択してくれるようになれば、これほどうれしいことはありません。そして彼らが自然を宝と感じられる環境を残すことがわれわれの使命です。

 隣の芝生だから青く見えるのではなく、住んでいる者にも青々と茂った芝生が楽しめる、それこそが、十数万人の好奇心をも満たす、みなかみ町のリアルな素晴らしさなのだと思っています。







(上毛新聞 2011年1月12日掲載)