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石炭資源開発取締役社長  鈴木 均(千葉県佐倉市)



【略歴】千葉市生まれ。東京大経済学部卒業後、東京電力入社。米国ワシントン事務所副所長、本店燃料部長、執行役員群馬支店長などを経て2007年から現職。


日本のLNG事情



◎シェールガス開発が鍵



 第1回(昨年11月19日)の本稿で、日本の電源構成中、ウエートが一番高いのは、約3割を占めるLNG(液化天然ガス)であることをお伝えしました。

 今や電力だけでなく都市ガスの主要原料にもなっているLNGについて、その特徴をかいつまんでご説明しましょう。

 通常、天然ガスは気体のままパイプラインを通じて輸送されますが、遠隔地にタンカーで輸送するとなると、体積を大幅に減らす必要があります。

 天然ガスの主成分であるメタンは、マイナス162℃まで冷却すると液体になり、体積が600分の1まで圧縮されますが、その液化技術が確立を見たのは、1960年代に入ってからでした。

 日本では、1969年に東京ガスと東京電力が共同で、アラスカからLNGを初めて受け入れました。それ以降、受入量は飛躍的に増加し、現在では年間7000万トン近くに及び、このうち約65%が電力用です。世界のLNG貿易量は、年間1億8000万トン程度ですから、日本だけで、世界のLNGの約4割を受け入れていることになります。

 日本への輸出国はインドネシア、マレーシア、オーストラリアがほぼ“だんご状態”のご三家。地域別ではアジア・オセアニアが3分の2、中東が4分の1と、両地域でほぼ9割を占めています。また昨年初めてロシア(サハリン)が輸出国の一員に加わったことも特筆に値します。

 発電用燃料としてのLNGには、以下のように一長一短があります。

 長所は硫黄分が含まれていないこと。二酸化炭素(CO2)排出量も、石炭に比べると6割程度と、相対的にクリーンな燃料であることが挙げられます。

 また約9割を中東に依存している石油に比べ、「火薬庫」ともいえる同地域への依存度が低いため、供給の安定性に優れているともいえるでしょう。

 一方、LNGはほとんどが長期契約で取引されており、供給面での弾力性に欠けることが短所です。つまり急激な削減や増量が難しいのです。ただし、近年はスポット調達や年間契約のウエートも徐々に高まりつつあります。

 もう少し長い目で見ると、LNGの需給が今後どのように推移するかが大きな焦点となります。

 供給面では、非在来型の天然ガス(頁岩(けつがん)中に含まれるシェールガスや炭鉱から得られる炭層ガス)の開発が、今後順調に進展するか、需要面では、中国やインドと言った発展途上国が、今後どのような電源選択指向していくかが大きな鍵を握っています。

 電力や都市ガスの源であるLNGについては、今後の日本のエネルギー需給を大きく左右するだけに、その動向を注意深く見守る必要があります。







(上毛新聞 2011年1月17日掲載)