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県防犯協会専務理事  岡 正雄(前橋市下石倉町)



【略歴】中央大法学部卒業後、1974年に拝命。伊勢崎署長、犯罪抑止対策実施本部長を経て退職。2008年4月から現職。県安全安心まちづくり推進協議会委員も務める。


犯罪件数減少



◎未然防止へ意識向上を



 群馬県犯罪防止推進条例が施行されたのは2004(平成16)年6月16日。これによって各機関団体に、それぞれ推進体制が確立された。同時に、県民の自分の身は自分で守る意識や防犯ボランティア活動への参加意識が高まって、犯罪の総量抑制に一定の効果があったことは前回(11月22日付)の通りである。

 同年の県内犯罪発生総件数は4万2千件超で、過去最高だった。だがこれがピーク。翌05年から昨年まで6年連続で減少している。減り方も大きく、昨年中の発生件数は2万2千件超。04年より2万件以上、約48%も減ったことになる。1日当たりでは117件だったのが61件に減少した計算。15年前と同水準にまで回復したことになる。

 しかし喜んではいられない。総件数は確かに減少したが、女性や子供が被害者になるような犯罪は増加。振り込め詐欺などは、まだまだ県民を苦しめ、大きな不安を抱かせている。

 さらに、一向に回復の兆しが見えない厳しい経済情勢の中で、強盗等の凶悪犯罪の発生が憂慮される。現状では「県民誰もが犯罪被害に遭う不安を感じることのない生活」が実現したと胸を張ることはできない。

 では、犯罪が起きにくい社会を実現するためにはどうすればよいか。

 まず、犯罪防止の主体である警察には、当然ながら、発生した事件を確実に検挙・解決することを期待したい。その実現には、住民からの情報提供等の協力が不可欠である。だがそれには「信頼される警察」であることが大前提であろう。一方警察は、犯罪情報や安全情報をタイムリーに発信し、住民に現状を周知することもまた必要である。

 次に県・市町村の自治体には、声を掛け合う自主パトロールや防犯出前講座等に住民が連帯して臨めるような犯罪防止対策を、こまめに推進することを願う。

 そして「個々の県民」には、それぞれの地域で自らの街や身を守る意識を向上させ、被害に遭わない術を身に付けてほしい。防犯ボランティア活動の活性化を図ることも必要である。

 財団法人群馬県防犯協会は、防犯ボランティアを結集した推進母体で、正会員は市町村または警察署単位の防犯協会。「安全安心まちづくり」の趣旨に賛同し、社会貢献を果たそうとする企業や個人を賛助会員(会員数650団体等)としている。正規には、1985(昭和60)年12月から公益法人として警察の指導の下、地域に密着した活動を推進している。

 協会の事業は大きく二つ。一つは「地域住民・団体の防犯意識、防犯対策向上のための普及・啓発、広報事業」。もう一つは「市民等のボランティア精神の涵養と団体の活動の活性化を図るための支援・表彰事業」。詳しい紹介は、次回以降にしたい。






(上毛新聞 2011年1月20日掲載)