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ピアノプラザ群馬代表取締役  中森 隆利(高崎市問屋町西)



【略歴】静岡県磐田市出身。高崎経済大経営学科卒。家業の日本シュバイツァピアノで経営と技術を学び、1974年、ピアノプラザ群馬を創業。群馬交響楽団運営理事など。


音楽イベント



◎欠かせない外への発信



 昨年は“ピアノの詩人”フレデリック・ショパンの生誕200年の年であった。日本人は基本的にショパンのピアノ曲が好きである。演奏者をはじめ多くの人を虜(とりこ)にする魅惑的なメロディーや和声。これ以上ピアノという楽器の音色をうまく引き出した作曲家はいない。

 幼少期から天才といわれながら、10代で祖国ポーランドを離れ、パリを中心に活躍しながらも、離れた家族や友人への思い、祖国の危機、馴染(なじ)めない華やかな生活、健康の不安などの境遇の中から珠玉の名曲が生まれている。多くの人に感動を与えるのはこうした体験が織り込まれているからにほかならない。

 そのショパンが生涯愛したピアノがフランス製の「プレイエル」である。そして、ショパンが使用していた同モデルのピアノが明和町のエモリピアノの工房(1849年製)と高崎のピアノプラザ群馬(41年製)にあり、これらの演奏可能で完全に近いオリジナルピアノを弾きに、全国からプロ、アマチュア関係なく多くの人がショパン本来の音色やタッチを求めて集まってきた。

 また、この2台は各地に貸し出されている。ゴールデンウイークのクラシック音楽最大のイベント、東京の「ラ・フォル・ジュルネ」や福島県のホテルの美食晩餐(ばんさん)会、都内や首都圏でのショパンプログラムのコンサートなどの演奏に使われており、テレビを中心としたメディアでも多く取り上げられている。このため、このピアノの所在の問い合わせが多く、「2台ともなぜ群馬県に?」と不思議がられる。

 実は、群馬は隠れたピアノ王国である。その普及率は最上位で、古楽器の修復まで手がける技術者が存在するほか、歴史的なピアノも多く展示されていて、販売だけでなく、特別な演奏会や映画撮影などのため全国に貸し出されている。

 普及率が高いのは、住宅事情だけでなく、群馬交響楽団に象徴されるように、音楽を楽しみ、支える多くの人と、車をフルに活用してレッスンに通う生徒さんの存在が大きい。

 昨年の第16回ショパン国際コンクールは生誕200年と重なり、新聞や雑誌などでも詳しく紹介された。開催中のワルシャワは数多くの日本人を含め大変な賑にぎわいで、コンクール会場は東京のサントリーホールさながらであった、と知人が言っていた。

 文化は観光や産業につながり、多くの人を集め、賑わいを生み出す。そのためには外への発信が欠かせない。県内でも多くの音楽イベントがあるが、市外・県外からどれだけの集客があるかを考える時期に来ていると思う。特に、今年は大型観光企画「群馬デスティネーションキャンペーン(DC)」の年でもある。






(上毛新聞 2011年1月26日掲載)