視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
ステージサービス群馬社長  添川 秀樹(前橋市富士見町石井)



【略歴】早稲田大社会科学部卒。日本ホールサービス取締役群馬支社長を経て現職。現在、社団法人企業メセナ群馬理事。群馬楽友協会理事(事務局長)。


自主文化事業



◎第三者の評価が不可欠



 我が国で初めての劇場法制定が俎上(そじょう)に載っていることを前回(12月1日付)書きました。立案に中心的な役割を期待される内閣官房参与の平田オリザ氏の構想は雄大です。創造拠点の劇場では世界水準の作品を創って、その作品で海外にも打って出る…。では地方の文化施設は? 地方でも創造する劇場が中心となって作品をつくり、県内各施設に供給する構想があるようです。

 公立文化施設は施設を安全に保持し住民に公平に貸し出して、その要望に応じておりますが、貸し館だけが業務のすべてではなく、各施設で独自の事業を企画制作し実施しています。

 劇場法の制定過程にあって、特に地方の公立文化施設の在り方が問われる現在、過去のいくつかの事業を検証することによって、問題に接近できないものかと考えました。

 私は、公立文化施設の舞台運営をサポートする技術者の派遣を主たる業務とする企業の代表者として、今日まで18年余を県内の7施設でお世話になってきました。個人としては、各施設の自主文化事業の制作運営に多様な立場で参画してきました。

 私の机の上には、野外劇、演奏会、町民ミュージカル、音楽祭等のファイルが山積みです。本稿を書き継ぐに当たって、その正確を期すために用意したものです。

 1993年、玉村町の町名伝説に想を得て町民による野外劇を提案しました。文化センターを運営する財団、続いて町内での協議を重ね、同センター開館1周年記念事業として承認されました。町民135名の実行委員会が立ち上がり、夜の練習を経て、提案から11か月後の94年5月、2日間にわたる野外公演が実現しました。観衆は合わせて1000名を超え、収支も計画内のトントン。『新しい町の祭り』になるはずでした。ところが、1回限りの公演で終止符が打たれてしまったのです。原因は結局のところ、町民の方々の支持を得られなかったところにあると結論づけました。

 私は、この事業はいくつかの点で評価されて良いと思っております。第一に地元の伝説に基づく事業であったことで、町民が足元を考える一つの契機になって、まさに文化事業となったこと。第二に、稽古、衣装、舞台装置などの製作すべてが当該センターで行われたこと。第三に、終演後に反省会が持たれ、真摯(しんし)な評価が行われたこと、などです。

 そこに今後地方の施設に要望される点がわずかなりとも見えると思います。特に第三者による評価は不可欠です。お金の遣い方、施設の使い方、アートの創造。その評価。どうあるべきか、問題山積。1回限りでしたが、演じきった少女たちの笑顔…素敵でした。







(上毛新聞 2011年1月29日掲載)