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大妻女子大教授  干川 剛史(神奈川県相模原市)



【略歴】前橋市生まれ。慶応大大学院修了。阪神・淡路大震災から情報ボランティアを実践する。徳島大助教授を経て、現在、大妻女子大教授、日本災害情報学会理事。


災害時の情報提供



◎FM放送の規制緩和を



 昨年10月20日に局地的大雨(ゲリラ豪雨)による水害が発生した鹿児島県の奄美大島へ、現地調査のために12月18日から20日にかけて行った。特定非営利活動法人「基盤地図情報活用研究会」メンバー2名と一緒だった。

 鹿児島県ホームページの「奄美地方における集中豪雨災害に関する情報」(2010年11月26日16時現在)によると、人的被害(死者3名・負傷者2名)、住家被害(全壊10棟・半壊479棟・一部損壊11棟・床上浸水119棟・床下浸水767棟)である。ここで、この水害で亡くなった方たちのご冥福をお祈りいたしますとともに、被害を受けられた多数の方々にお見舞いを申し上げます。

 さて、筆者たちは、12月18日に羽田空港から飛行機で奄美空港に到着し、レンタカーに乗って、龍郷町の土砂崩れ死亡現場を視察。次に、奄美市の市街地に入り「あまみエフエム」(コミュニティFM)の放送局で聞き取り調査に行った。

 この調査結果は「奄美大島2010年10月20日水害現地調査」(http‥//jpgis.jp/index.php?gid=10027)に掲載している。

 「あまみエフエム」の代表とスタッフによれば、一昨年、奄美市と防災協定を締結しており、災害時には24時間態勢で災害情報を放送することになっていた。

 この水害で奄美市内の大部分が停電。携帯電話と固定電話の通信も途絶していたため、奄美市役所の災害対策本部は、各地の被害等の情報収集が困難で、市内全域の状況把握ができなかった。しかし、災害対策本部に詰めていた「あまみエフエム」のスタッフが、リスナーからメールやFAXや電話で寄せられた情報を随時、奄美市側に伝えることができたため、災害対応に大いに役立った。

 しかし、リスナーからの情報件数が非常に多かったため、人手が足りなくて情報の整理が困難となり、十分に情報を活用できなかったのが残念であった。

 「あまみエフエム」は、多くのコミュニティFMと同様に財務基盤が十分ではない。また、コミュニティFM開設は、1市区町村に1局という国の規制があるため、奄美市での放送を許可されている「あまみエフエム」は、島全域(1市2町2村)をカバーする放送ができず、災害等の緊急時に十分な活躍ができない、ということであった。

 今回の水害で活躍が全国的に注目された「あまみエフエム」などの地域貢献の顕著なコミュニティFMに対しては、国や地方公共団体からの財政支援が必要である。1市区町村1局という放送法上の規制は、離島や山間部といった過疎化の進んだ地域については、住民の生命・財産を守るという観点から、地域の実情に合った緩和をすることが望ましいのではないか。








(上毛新聞 2011年2月1日掲載)