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◎子に引き継ぐと消える 免疫とは「疫病を免れる」という意味です。その語源はギリシャ語の「イムニタス」に由来し、それは兵役や納税の義務を免除するという意味だそうです。今も昔も、兵役や納税は疫病神です。その疫病神から免れるという意味で免疫という言葉ができたのでした。 免疫の主役はリンパ球です。リンパ球の活性を測ることで免疫の強さが分かります。そして調べてみると、10歳以下では免疫力はまだ弱いことが分かりました。ところが、10歳を過ぎるころから免疫力は次第に強くなり、その状態が40歳まで続きます。40歳は「花の中年」などといわれますが、免疫活性もピークを迎え、花の中年は免疫にも現れているようです。 20歳から40歳までは子供を作る大切な年代です。しかも病気には無縁な年代です。これは天の恵み、神の采配とでもいうべきでありましょう。免疫は病気防止ばかりか、種族繁栄にも大いに貢献しているのです。 ところが、40歳を過ぎるころから免疫力はだんだんと低下し、病気も発生してきます。そして、がんもこのころから多くなります。 どうして40歳を過ぎると免疫力が低下するのでしょうか。免疫学者は「それは体の中から“スーパーオキサイド消去酵素”という物質が消えてしまうからだ」といいます。「スーパーオキサイド」とは活性酸素の一つで、あらゆる病気発生の原因物質といわれています。その物質を無害にする酵素が「スーパーオキサイド消去酵素」です。私たちはこの酵素のお陰で、40歳までは病気にもならず元気に暮らすことが保証されているのです。 ところで、40歳を過ぎるとどうしてこの大切な酵素が消えてしまうのでしょうか。遺伝学者はそれを次のように説明しています。 遺伝子はタブレットであるといいます。タブレットとは、単線上を走る列車の通行手形みたいなもので、単線上では列車が他の列車に衝突しないために、そのタブレットを持っている列車だけが、その区間を走ることが許されます。 同じように、私たちは親から引き継いだタブレットである遺伝子を持って自分の区間を走っているのですが、子供にそのタブレットを引き継ぐことで自分の使命は終わります。そして、タブレットである遺伝子だけが次の世代に伝えられ、その人の責任は果たしたことになります。その使命の完了する年齢が40歳だというのです。 人は子供を生む年齢が過ぎると、体内ではスーパーオキサイド消去酵素を作ることができなくなり、表舞台から消え去る運命にあるのです。そう考えると、人は単なる遺伝子の運搬人に過ぎないのかもしれません。子供を生む間だけ生存が保証されているともいえるでしょう。 (上毛新聞 2011年2月3日掲載) |