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公立富岡総合病院看護部副部長・がん看護専門看護師  
                             清水 裕子
(高崎市稲荷台町)



【略歴】前橋市出身。病院で看護師の実務経験を積んだ後、北里大大学院看護学研究科修了。2006年、県内初のがん看護専門看護師の認定を受ける。


患者会の運営



◎困難乗り越える援助を



 2年前から当院では月1回、抗がん剤治療を受けている患者さんを対象とした「患者会」を行っており、私は企画・運営の一員として携わっている。患者会では、患者さんたちが病気になってからの気持ちなど話したいことを話す日もあれば、院内の栄養士や薬剤師、看護師などが講義をする日もある。家族が参加することもあり、患者さんを支えるつらさを話される時もある。患者会では細かい決まりごとはなく、参加してくれる患者さんの希望を聞きながら臨機応変に行っている。

 患者会は、「他の患者さんは、いつごろから職場復帰をしているのでしょうか。他の人がどうしているのか知りたい」というある患者さんの言葉に背中を押されて始めることになった。体への負担がないようにと患者会の運営は1回90分程度にしているが、話が弾んで延長することも多く、さらにその後、患者さん同士で連絡先を交換し、別の日に食事に行ったりしているようだ。このように患者さん同士が交流を深めている話を聞くと、「少しは役に立っているのかな」と私もうれしくなる。

 がん患者さんへのケアを学ぶ中で、がんとともに自分らしく、今を生きている方のことを「がんサバイバー」という。サバイバーを英語の辞書で調べると、「生存者、困難を何とか切り抜けていく人」という訳が出てくる。治療の進歩によってがんにかかってからの長期生存が可能になり、がんとともにどのように生活していくか、ということが課題になってきている。がんという病気そのものを受け入れること、治療を続けること、治療の副作用と付き合うこと、再発の不安を克服することなど、患者さんにはこういった困難を切り抜けていくことが必要とされ、患者さんが困難を乗り越える援助をするのが看護師の役割の一つだと感じている。こういった困難を抱えている患者さんの多くは社会人として生活しており、医療者との接点が少ないことや同じような状況にある患者さん同士が知り合う機会というのも限られている。これらの問題を解決する手段として、当院の患者会は始まった。

 当院での患者会も回数や時間は適切なのか、困難を乗り越える援助になっているか、多くの方にも参加してもらうにはどんな工夫をしたらよいのかなど、検討することはたくさんある。しかし効果があることを私は感じている。

 昨年制定された「県がん対策推進条例」でも、「がん患者・家族の療養生活の質の維持向上及び精神的又は社会生活上の不安その他の負担の軽減」についてうたっている。がんサバイバーへの援助は大きな課題として、今後も取り組んでいきたい。





(上毛新聞 2011年2月5日掲載)