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太田商工会議所専務理事  松田 賢治(桐生市新里町)



【略歴】旧笠懸村生まれ。桐生高、法政大卒。1967年に太田商工会議所に入所。事務局長、常務理事を経て2005年から現職。地域の中小企業支援に力を注ぐ。


商工会議所の使命



◎人材育成に各種検定も



 2011年の日本経済は、円高で年前半は厳しいが後半から回復して行く予想であります。

 しかし、現在の中国やインド、ブラジルのような景気回復は望めない。それならば今後、高度成長し需要が望める国へ進出して行こうと、企業は考えているようです。

 太田商工会議所は数年前から、海外進出企業の支援をしようと国際協力銀行の支援を得て相談会をひらいています。その状況を見ていると、多くの中小企業に海外進出への意欲がうかがえます。日本から「ものづくり産業」が減少するのか、それとも新技術を駆使した新しい「ものづくり産業」が生まれてくるのか、重要な時を迎えているようです。

 さて今回は、世界における商工会議所の歴史と日本の商工会議所について書いてみます。

 世界で最初の商工会議所は1599年フランスの地中海に面したマルセイユという港町が発祥の地です。

 交易の一大拠点となっていたため、交易に伴う利害が発生し、その話し合いをするために設立されたと記述されております。

 そして、瞬く間にヨーロッパ全土に設立されました。その時代の日本は1598年=豊臣秀吉死亡、1600年=関ケ原の戦い、1603年=徳川幕府の開府-という時代でした。

 ヨーロッパから遅れること約200年。1791年、松平定信の断行した「寛政の改革」により、商人や町民の話し合いの場である「町会所」が設立されました。これが現代の商工会議所の役目をしていたのではないかと思われます。

 また、英国では1768年に、米国でも同年に商工会議所が設立されました。

 商工会議所には、仏独系と英米系の二つの潮流があります。仏独系の商工会議所は、政府の補助機関的な性格をもつ公法人です。一方の英米系は、任意団体または非営利法人として加入、脱退が自由な会員で組織されています。

 日本の商工会議所は、両系統の利点を取り入れて設立されました。組織は会員・非会員を問わず、中小事業者の金融、税務、経営等の相談や支援をしている部門と、会員組織で運営されている部門とに、大きく分けて二つの部門から成り立っており、商工会議所法という法律に基づいて事業を推進しています。

 事業の一つに、ご存じではないと思いますが、小・中・高校生を対象とした簿記や珠算検定、パソコン、そして社会人を対象とした(高校生や大学生も多く受験)販売士、ビジネス英語、エコ検定など各種の検定試験を実施しています。

 商工会議所は地域経済の活性化とともに、各種の検定試験を実施し、社会や企業で貢献する人材の育成にも努めています。





(上毛新聞 2011年2月6日掲載)