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整理収納アドバイザー  山口 智子(前橋市上小出町)



【略歴】福岡県出身。本県で初めてNPO法人ハウスキーピング協会認定整理収納アドバイザー1級を取得。「お片付けスクールのシークエンス」を起業し、講座を開催。


片付け上手になるには



◎意義を理解し実践する



 昨年12月17日に1回目の記事を書かせていただきました。内容は、整理収納アドバイザーの視点から、物との付き合い方や学校教育でも整理収納術を取り入れてほしいというものでした。すると、しばらくして思いもよらないすばらしい機会をいただきました。前橋市内の小学校から3年生の道徳の授業のゲストティーチャーとして招かれたのです。授業のねらいは、片付けの方法について話し合う活動を通して自立心を育てること。道徳の授業なので、単に片付けができるようになればよいというわけではないのです。趣旨、対象、教壇に立つ、全てが私にとって初めてのこと。年を取るほど新しい経験をする機会は減ってくるもの。またひとつ新たな経験ができることに感謝しました。

 授業内容は、まず先生が児童に課題文から片付けの意義を気付かせます。次に私が子供部屋の「ビフォーアフター写真」を元に具体的な片付けの方法と、片付けの効果について話をしました。

 いつも散らかっている環境で育つ子供、いつもすっきりきれいに親が片付けている環境で育つ子供。将来どちらが片付け上手になると思いますか? 答えは、両者とも片付け上手にはなれません。子供自身が小さいころから片付けの意義を理解し、実践することにより、片付けられる大人になるのです。今回の授業では、たまたま片付けを例に出しましたが、何でも親にしてもらうのではなく、自分ですることが自立への一歩ということをまとめとしました。小学校3年生にもなると、大人顔負けの意見も出て驚くこともしばしばでした。でもまだまだ愛らしい一面を持つ児童たちを前に、とても楽しい授業となりました。

 さて、この授業を大人の方に受けていただいたらどうでしょう。意見は、たぶん子供たちと大差ないのでは、と思うのです。片付けというのは、幼児から人生を終えるまで続く作業。でも片付け、整理収納という言葉が、毎日のようにメディアに取り上げられ、整理収納アドバイザーという資格が存在することを考えると、皆が簡単にこなしているわけではないということがうかがえます。片付けるという言葉の意味は、散らばっているものをきちんとした状態にすること。整理収納アドバイザーは、きちんとした状態を維持できるようにアドバイスするのが目的であって、片付けアドバイザーではありません。

 一度片付いたら、また散らかってしまうことのないようにするためにはどうするか。今回の道徳の授業のねらいの通りなのです。自分で片付けの意義に気付き、たくさんの効果を知る。そうすることによって片付けに対する意識が変わります。収納の方法を考える必要など皆無なのです。







(上毛新聞 2011年2月13日掲載)