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わたらせフィルムコミッション(WFC)代表  長谷川 博紀(桐生市東)



【略歴】三重県出身。1998年に森秀織物入社。現在、同社社長。元桐生青年会議所理事長。2010年4月からWFC代表として映像作品製作の支援活動に取り組む。


撮影隊受け入れ



◎映像通して魅力を発信



 桐生市とその周辺では現在、映画撮影に代表される、さまざまな映像制作のロケが行われている。

 当然、映像に関わる方々の要望に応えられるロケーション、場所、建物があることが前提ではあるが、行政も一体となって地元の協力があって成立している事業だと考えている。

 それでは、この映像に関わるフィルムコミッションの目的は何かと聞かれると、実は非常に難しく、一言では言い表せないかもしれない。

 桐生地域で運営しているわたらせフィルムコミッションの設立目的は単純明快で、「この地域が面白く、にぎやかになるように、皆で楽しめることを」であったと聞いている。

 しかし、撮影件数が年々増えて、大がかりな撮影も来るようになると、フィルムコミッションを取り巻く環境は少々変わっていった。

 腰をしっかりと据えて長期ロケを行いたい映画制作があれば、短期間で撮影したいドラマ・コマーシャル・プロモーションビデオもある。東京から来る撮影隊の両極端の要望や問い合わせ件数が増えていき、丹念に精査することもままならなくなった。

 受け入れる地元とすると、撮影隊がもたらす経済効果を期待するようになる。経済効果が生まれるのは、地元にとって喜ばしいことであるし、まちづくりとしても、期待するところではある。数字になるので検証もしやすい。しかし、それは本来の目的ではなく、やはり副産物的なものであると認識する。

 現在、わたらせフィルムコミッションが目的としているのは、「子供たちがこの町に誇りを感じて、郷土を離れてもまた戻りたくなる」「出身者以外が住みたくなる」―そういった映像が、いろいろな媒体で発信されていくことであり、それを願いながら日々活動している。

 それでは願いにかなった映像制作があるかと聞かれれば、残念ながらそう都合良くはいかない。完成した作品を確認すると、この地域で撮影したことが良く分からないシーンが多いと感じる。それでも、地道に撮影隊と共同制作を重ねていくことが、地域の魅力を発信する一番の近道と信じている。

 教育・産業・観光・映像・趣味・まちづくり、映像制作に関わるフィルムコミッション事業はどの切り口でも語れるが、どれか一つに絞ることもできない不思議なツールだ。全国で多くの人々が映像を通してこの町を目にする。それだけでも魅力を発信する土台には確実になっていると考えている。






(上毛新聞 2011年2月28日掲載)