視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
新島学園短大准教授  亀井 聡(高崎市飯塚町)



【略歴】宮城県生まれ。県内の児童養護施設在職中に資生堂児童海外研修に参加し、豪州の児童虐待の取り組みを視察。その後駒沢大大学院を修了し、2006年から現職。



社会的養護とは



◎地域の協力得て支える



 昨年暮れ、本県から始まった伊達直人ブームで、児童養護施設をはじめとする社会的養護を多くのマスコミが取り上げ、関心が高まった。

 社会的養護とは、何らかの理由で家庭での養育が困難になった児童、すなわち虐待を受けたり障がいのある児童、不適切な養育環境の児童に対して社会が用意した養護の体系で、里親及び施設での養護である。

 広義の社会的養護は日常生活を保障する入所型の児童福祉施設、狭義の社会的養護は措置入所という形態で入所した児童の日常生活支援や問題行動などを治療する施設や里親で、代表的な施設として児童養護施設や乳児院、児童自立支援施設がある。

 児童虐待や養育環境に問題があり、年齢的に乳児の場合は乳児院、幼児以上なら児童養護施設へ入所したり里親へ委託する。児童虐待によって非行等の問題行動へ悪化した場合には児童自立支援施設、心や行動が不安定になり人間関係の問題や学校に適応できないような問題を抱えている場合は情緒障害児短期治療施設、知的な遅れが顕著であれば知的障害児施設等への入所となる。

 これらの施設への入所は措置入所と言われ、児童福祉法に基づいて都道府県の行政判断、すなわち児童相談所が相談を受理後、一時保護し判定会議を経て入所を決定する。費用は基本的に国と都道府県が50%ずつ負担することになっている。親の負担も児童福祉法により、負担能力に応じて徴収が可能だ。

 また、里親や社会的養護は児童福祉法に基づく厚生労働省令で、里親養育に関する最低基準、児童福祉施設最低基準が設けられ、都道府県知事はこれらの施設が最低基準を超えて支援を行い、運営・設備を向上させるよう勧告、助言指導ができると規定されている。さらに、児童虐待防止法においても国及び地方公共団体の責務として虐待を受けた子どもの保護、支援などが努力義務として課せられている。

 措置入所は、家庭での養育が困難になったために事後的かつ代替的に講じられるものではない。今日の社会的養護は「社会的」と名がついているように、養護に携わる里親や施設、そして措置機関の児童相談所が連携し、地域社会の理解と協力を得て入所児童の発達や抱えている問題を解決していくことが求められている。

 社会的養護実践は、都道府県の裁量次第で格差ができる。言い換えれば社会的養護格差は都道府県によって作られるといっても過言ではない。







(上毛新聞 2011年3月9日掲載)