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前橋地方気象台長  阿部 世史之(前橋市元総社町)



【略歴】富山県八尾町(現・富山市)出身。気象大学校卒。仙台管区気象台予報課長、気象庁予報部予報官、釧路地方気象台長などを経て、昨年4月から現職。



さまざまな気象観測



◎24時間体制で現象監視



 気象庁が行う気象観測の多くは、24時間体制で現象を監視して成果を公表するとともに、警報・注意報などの防災情報の基礎データになります。その代表は、全国の気象台などで行っている気圧、気温、湿度、風向・風速、降水量(雨はそのまま、雪は解かして測定)、日照時間などの観測です。また、気象台などを含む全国約1300カ所で自動観測を行うアメダス(「地域気象観測システム」の英語表記の略称)があります。すべての観測所で降水量を観測し、このうち約850カ所では、ほかに気温、風向・風速、日照時間、雪の多い地方の約300カ所で積雪の深さも観測しています。

 昨年の夏は暑い日が続き、アメダスの気温を測る通風筒につる性の草が絡むなど、不適切な観測環境になった所がありました。群馬県内の17カ所は該当しませんでしたが、一層適切な観測環境管理を行って精度の保持に努めています。

 気象庁は全国20カ所に気象レーダーを設置して1キロ四方ごとの雨や雪の強さを5分間隔で観測し、大雨の監視や大雨警報の発表などに利用しています。このうち16カ所で、電波のドップラー効果を利用して竜巻などをもたらす小規模な風の回転も観測します。群馬県は、千葉県柏市、長野県車山、新潟県弥彦山のレーダーでカバーします。

 レーダーのデータは誤差を含むため、国土交通省と気象庁のレーダーのデータを雨量計のデータ(都道府県からの提供も含む)で補正し、1キロ四方の解像度で全国の前1時間降水量の分布を30分ごとに発表します。この「解析雨量」から、土砂災害の危険度を示す「土壌雨量指数」や洪水の危険度を示す「流域雨量指数」が算出され、大雨や洪水の警報発表などに利用しています。

 また、全国31カ所にレーダーの一種であるウィンドプロファイラを設置して高さ約5キロまでの風向・風速を高度300メートルごとに10分間隔で観測し、強風の監視や数時間先の大雨予測などに利用しています。群馬県の近くでは、水戸市、熊谷市、新潟県上越市などにあります。

 これらの気象観測を高い精度と必要な時間間隔で行うこと、データを高速で収集・配信する通信システムを整えること、データに基づいて高い精度できめ細かな予測を行うこと、それを各種防災情報として利用者に迅速に伝え適切に活用してもらうことによって、国民の安全・安心を確保する気象庁の任務を果たすことができます。

 日本で気象事業が始まって140年近くの間、常に最新の科学技術を取り入れることによって今日の基盤体制が確立されてきたことを思い、幾多の先人の苦労にも報いる気象業務を進めるよう努めます。







(上毛新聞 2011年3月22日掲載)