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奈良ADHDの会ポップコーン教育相談員  西田 清(奈良県橿原市)



【略歴】東吾妻町矢倉出身。岩島中、渋川高、奈良学芸大卒。奈良県内の小学校、養護学校に勤務。奈良自閉症協会、奈良ADHDの会事務局長を経て現在教育相談員。


「両親教育」とは



◎行動注視ほめて育てる



 知的障害のない軽度の発達障害(ADHD、LD、アスペルガー)の子育てと療育・教育で実践され、改善に大きな効果を上げているペアレントトレーニング(両親教育)があります。アメリカで開発実践され、日本でも先進的な精神科医の指導のもと、保護者や療育教育者などの協力で実践されました。その結果、障害を軽減し本人の能力を最大限に発揮して、大学で学んだり、就労して社会人として自立、結婚し幸せな家庭を築いている人もいます。

 このトレーニングは、実は健常児の子育てに応用することで、健全な子供を育てるのに大いに役立つ内容ですので、子育てにお悩みの方はぜひ一度ペアレントトレーニングを学んでみてください。トレーニングの内容については本も何冊か出版されています。私たちの奈良ADHDの会で出版した本にも載せてあります<『ADHDの子育て・医療・教育』楠本伸枝(母親)岩坂英巳(精神科医)西田清(元教師)、クリエイツかもがわ発行>。旧版は6刷りし、好評でしたので現在は改訂新版です。とても重要なごく一部分だけ紹介したいと思います。

 私たちの子供を見る視点を「困った子供」から「困っている子供」に根本的に変更する。つまり、「自分はできない」という思いから⇒ほめられることで「自分はできるのだという思いを積み重ねる」⇒「自分に自信を持って思春期には自立の道を歩むことができる」。これがペアレントトレーニングの大切な内容で、幼児期から始めるほど効果は大きいです。

 ◎奈良ペアレントトレーニング家族教室から

 ほめて育て、不適切な行動は叱らず、どうしたかったのか子供の思いを聞き、適切な方法を教えて、できるようになるまで練習し、できたらほめることを繰り返す。

 【1】子供の行動の観察と理解…子供の特性をしっかり観察(刺激に対する反応、注意の集中と持続、対人関係など)し、記録して対応する。少し離れて客観的に眺めることで、手掛かりを得て、有効な事柄を記録します。

 【2】子供の行動が改善される五つのポイント…(1)いきなり高望みしない(2)子供の行動をよく観察する(3)今できることから、一段一段ステップを踏んで着実に狙いを定める(4)子供の特性に合わせ、できたという自信を持たせる(5)一貫性を持って正しいことを身につけさせる

 【3】ほめて育てる…親や療育教育者は「子供の良い行動に注目+ほめる習慣を身につける」ことが子供の発達に決定的に重要です。適切な行動を増やし、良好な対人関係や社会生活を自信を持ってできるようにする。

 次回、幼児期には重度なADHD児の大学合格までの14年間の実践と教訓。






(上毛新聞 2011年3月25日掲載)