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公立富岡総合病院看護部副部長・がん看護専門看護師 
                            清水 裕子
(高崎市稲荷台町)



【略歴】前橋市出身。病院で看護師の実務経験を積んだ後、北里大大学院看護学研究科修了。2006年、県内初のがん看護専門看護師の認定を受ける。


リンパ浮腫のケア



◎手足の「むくみ」を改善



 現在、私は病院の中でリンパ浮腫のある患者さんのケアに携わっている。リンパ浮腫とはリンパの流れの経路が遮断され、徐々に流れにくくなり、少しずつたまってきて処理しきれなくなったときに起こる「むくみ」のことである。

 全国でリンパ浮腫をもつ患者さんの数は10万人とも15万人ともいわれている。リンパ浮腫の原因はいくつかあるが、私がかかわっているのは、主に手術でリンパ節を切除したことによってリンパ液の流れが悪くなり、腕や足にむくみがある患者さんで、婦人科がんや乳がんの手術後の患者さんが多い。

 リンパ浮腫のケアは外来通院中の患者さんであれば診察日に合わせて、入院中であればその日の予定に合わせて行っている。医師の診察・診断の後、依頼を受け日常生活での注意事項や自分で行うマッサージ(ドレナージ)法を説明したり、リンパ浮腫を予防するための着衣(弾性着衣)を紹介している。浮腫の程度や理解、希望に合わせて説明をして終了する患者さんもいれば、半年程度通院してもらいリンパドレナージを直接私たちが行う患者さんもいる。

 数年前まではリンパ浮腫に対する医療者の関心は低く、十分な説明やケアを提供できていなかった。しかし、診療報酬上で手術前または後にリンパ浮腫の予防に関する説明を患者さんにすると費用を請求できるようになったこと、弾性着衣の購入が療養費の対象になったことなどから医療者の関心も高くなってきた。

 当院でも看護師が学習を重ね、婦人科がんや乳がんなどの手術を受ける患者さんには入院中にリンパ浮腫について説明しているので、予防や早期発見に役立っている。しかし、過去に手術を受けた患者さんには手当てがなされていない現状がある。患者さんは腕や足がむくんでも、なぜむくみが起こっているのかわからず放置してしまったり、関係のない科を受診して対応が遅れたりすることがある。

 また、ケアを提供する側の問題として、当院では研修を受けた看護師でチームを組んでケアにあたっているが、私たちのケアは費用を請求できないので病院の中でシステムとして確立するのが難しい。リンパ浮腫で困っている患者さんを目前にして、今できる最大限のケアを提供しようと試行錯誤しているところである。

 ある患者さんはドレナージの後「(滞っていた)水が流れるような気がする」と言い、時間はかかったが徐々にリンパ浮腫が良くなり、休んでいた仕事に復帰できたと話してくれた。これからも、少しでも良いケアが提供できるよう努力していきたいと思う。なお、浮腫には種類があるので自分で判断せず、まずは主治医に相談してもらいたい。






(上毛新聞 2011年4月2日掲載)