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群馬ダイヤモンドペガサスチーフマネジャー  谷口 弘典 (高崎市貝沢町)



【略歴】北海道出身。札幌西高、高崎経済大を卒業後、米独立リーグで捕手としてプレー。NPB千葉ロッテマリーンズのチームスタッフを経て2008年から現職。


地域球団の役割



◎ファン交流や連携促進



 3月11日に東日本大震災が起きた。自分にとって未曽有の大地震であった。今そしてこれから、私たちに何ができるか真剣に考え、取り組まなければならない。実際に野球界そしてスポーツ界で何ができるのであろうか。議論に正解は存在しないが、ファンあってのプロ野球である。もちろん被災された方の中にもたくさんのプロ野球ファンがいるし、今までその方たちが支えてきたのである。今こそ、力を合わせて日本を復興させる時である。時間は有限だ。一人一人が今すべき優先順位を考え、消化してもらいたい。

 高校野球の第83回選抜大会は東海大相模高が優勝を果たし幕を閉じた。震災後、わずか10日余りでの開催で、その可否に賛否両論があったが、選手たちのはつらつとしたプレーは被災地の方々を勇気づけたことだろう。その中で選手宣誓を務めた創志学園(岡山)の野山慎介主将(2年)は立派だった。くしくも阪神大震災の年に生まれた球児である。彼の選手宣誓により、大会に批判的な声も少しは払拭(ふっしょく)できたのではないだろうか。「人は仲間に支えられることで大きな困難を乗り越えることができると信じています」

 今年は群馬ダイヤモンドペガサス結成4年目を迎えた。個人的に「頑張ろう、日本」で復興の手助けはさることながら、野山選手がいう仲間づくりに励みたいと思う。ここ最近、プロ野球もチーム名に地域名を入れて地域色を出してはいるが、いまだに企業名が存在し、企業色の方が強い感もある。その点、Jリーグは企業名を排除し、地域密着型のクラブ運営を進めている。

 われわれが所属するBCリーグもこれに近いと考えている。地域密着とは、(1)地域の行政、企業、住民が積極的にチーム運営に参加することができる(2)チームが地域住民の帰属意識を高めるシンボル的な存在になる(3)地域の行政、企業、住民とチームが協同することによってさまざまな利益を得ることができ、そしてそれが等しく還元される―と定義される。

 選手はもちろんNPB(日本プロ野球機構)球団への入団を目標に努力を重ねるのが前提であるが、ただ野球をやっている集団であってはならない。7月1日~9月30日に群馬デスティネーションキャンペーンが行われる。県外のファンにも群馬のイメージを向上させる良い機会であるし、県内外におけるファン同士の交流や連携を促進させ、多大なる社会効果ならびに経済効果をもたらすことも可能だ。地域球団としての役割に寄与し、地域コミュニティーの結束を図り、群馬県民という大きな仲間を手にしたいと思う。







(上毛新聞 2011年4月5日掲載)