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織物製造・販売  山岸 美恵 (館林市仲町)



【略歴】1974年に結婚し、家業(山岸織物)の手伝いに入る。25年ほど前から二次製品のデザイン、製作を始め、前掛けやブラウス、シャツなど約20種類を手掛ける。


伝統の織物



◎展示会通し魅力伝える



 「求評会」という耳慣れない言葉ですが、織物業界の人たちにとっては、「織姫祭り」とともに重要な年間行事となっています。

 邑楽・館林地方では、春・夏用の木綿の反物を中心に織っていますので、毎年3月に行われています。

 昔は日本橋や熱海などで開き、買い継ぎさんや問屋さんに来ていただいて春・夏物の新作を発表し、良い柄や織物に投票してもらい、お互いに競い合った大事な行事でした。

 しかし、現在は買い継ぎさんや問屋さんも少なくなり、さらに織物業者も高齢化して、本来の「求評会」の開催が難しくなってきました。

 そこで、一般の人に見ていただき、「館林紬(つむぎ)」を宣伝していこうということになりました。4年前から反物だけでなく、邑楽・館林地方の織物の歴史や織物の工程を知ってもらったり、館林紬を使用した小物やシャツなどを展示しています。

 今年は3月8日、9日の2日間にわたり三の丸芸術ホールで開催しました。来館した方々との交流を深める場づくりとして、今回初めて紬を使用した「ふくろう」の小物作り講習会を企画し実施しました。

 講師は着付け教室の先生と生徒にお願いし、館林紬の着物を着て教えてもらいました。大変好評でした。当日は延べ約150人が受講し、熱心に取り組んでいました。出来上がった「ふくろう」を、いとおしそうに見せてくれると、次回は何をしようかと考えるのが楽しみになります。

 会場に足を運んでくださり、反物を手にした人からは「今まで知らなかったけれど、館林には良い物があるのですね。こうした伝統あるものは失いたくないですね」という声も聞かれました。開催した私たちにとっては心強く励みになる言葉で、大変うれしくなりました。

 伝統を守っていくことは大変です。特に織物はたくさんの工程があり、何人もの手にかかわって出来上がっていくものです。

 このようなうれしい言葉が織り手に届く場が、年に一度の「求評会」です。伝統ある織物が失われつつあるのを惜しんでくれる人たちが大勢いることを、肌で感じることができる機会でもあります。

 昔からの仕事を生業にしている者に、やりがいを感じさせ、元気を出させるような場をつくることは重要です。「求評会」だけでなく、工夫改善して新たな企画を考えていきたいと思います。

 そして、喜んで着てみたいとか、買ってみたいとか感じられる織物や製品を作り発表できたら、と思いは広がっています。








(上毛新聞 2011年4月7日掲載)