視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
みどり市観光ガイドの会会長  松島 茂(みどり市東町)



【略歴】旧勢多東村出身。城西大卒。両毛建材社長を経て2005―09年、わたらせ渓谷鉄道社長を務めた。昨年7月に発足したみどり市観光ガイドの会の初代会長。


地域と公共交通



◎景観づくりに住民の力



 わがみどり市には、わたらせ渓谷鉄道が走っている。その景観の良さには地元の人間さえも感動を覚える。これからの季節は新緑のすがすがしさが格別である。また、夏は渡良瀬川のせせらぎを感じ、秋は燃える木々の紅葉を堪能できる。トロッコ列車に人気が集中するのは、これらがすべて体感できるからだ。

 わたらせ渓谷鉄道は旧国鉄足尾線を引き継ぎ、1989年に誕生した第三セクターの鉄道である。時代とともに、足尾銅山の閉山、ダム建設による路線変更、車社会への変貌、沿線地域の過疎化・少子化など、さまざまな環境変化の中で運行を続けている。長い年月のうちには、運行継続にかなりの逆風が吹いた時代もあったはずである。

 第三セクターの鉄道は、どれだけ沿線地域と密接な関係にあるかが生命線と感じている。当たり前だが、採算ベースのみを考えたら、地方に鉄道はなくなってしまう。公共交通は地域の営みに欠かすことのできない“足”である。交通弱者を切り捨てた時から地域の崩壊が始まる。

 そこで国の役割、地方の役割、利用者を含めた地域の役割があると思う。ここでは、地域の役割について述べるが、当然のこととして、まずは大いに利用することである。そして利用できないなら、何らかの形で関わり合うことだと思う。

 幸いにも、わたらせ渓谷鉄道には、沿線地域住民の頑張りがある。前述した素晴らしい景観もこの住民の方々の努力があって堪能できていることをここで伝えたい。渓谷美を見せるために、何年もかけて竹林の伐採を続けている人たち、杉林を間伐して渡良瀬川を見せる工夫をしている人たち、駅周辺の花植えや清掃活動を続ける人たちである。

 7月から始まる群馬デスティネーションキャンペーンについて、いろいろな報道がなされる中で、おもてなしの精神が取りざたされている。観光客の皆さまに気持ちの良い旅をしていただくための基本や方法等は当然のこととしてあるはずだ。

 ただ、わたらせ渓谷鉄道沿線でボランティア活動を続けている人たちは、当の以前からそれが備わっている。せっかく来ていただけるのなら、最高の風景を見てもらおう、きれいな駅舎で気持ち良く乗降してもらおう、そんな思いで活動を続けている人たちのおもてなしは、お客さまに最高の思い出をプレゼントできると私は思っている。

 できることなら観光客の皆さまには、公共交通をうまく利用してもらいたいと思う。地方の鉄道に乗り、地域の路線バスを乗り継ぐ―そんな旅をすることで、本来の旅の醍醐味を味わってほしい。それにより公共交通も生き延びていくことができる。







(上毛新聞 2011年4月8日掲載)