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整理収納アドバイザー  山口 智子(前橋市上小出町)



【略歴】福岡県出身。本県で初めてNPO法人ハウスキーピング協会認定整理収納アドバイザー1級を取得。「お片付けスクールのシークエンス」を起業し、講座を開催。


地震と収納法



◎高い場所の小物を整理



 片付けることは良いこと。幼児から大人まで誰もが分かっています。では「なぜ良いのか?」と聞くと、多くの人が「スッキリするから」と答えるのではないでしょうか。実は、整理収納にはもっと多くの効果があることに気がついていないのが現状です。聞けばすべて当たり前のようなこと。でもそれに気付き、あらためて納得することで、片付けという行為への意識が変わってくるのです。

 整理収納の効果は次の通りです。

 一つ目は、時間的な効果。

 二つ目は、経済的な効果。

 三つ目は、精神的な効果。

 四つ目は、衛生面の効果。

 五つ目は、安全面の効果。

 未曽有の東日本大震災に直面した日本。今回は、震災と整理収納が直接関係する安全面の効果についてお話ししたいと思います。今回、地震発生時の家庭やオフィス内の映像が度々テレビで流れました。突然の惨事に自分の身を守ることもできず、周りの高い場所から落ちてきそうな物を押さえ、揺れが収まるのを待っている方がいました。やはり地震大国日本に住んでいる以上、建物だけではなく屋内の家具、小物にも目を向け耐震性を高めるべきだと強く思いました。

 以前から整理収納のセミナーでは、安全面の効果をお話ししています。部屋が散らかっていると、物につまずいて転んでけがをしてしまったり、赤ちゃんがいる家庭では床に落ちている物を口に入れてしまったりと、危険なことがたくさんあるからです。雑居ビル火災でも、避難口が段ボールに入った荷物などでふさがれていて避難の妨げになったという話もあります。

 3・11の地震で震度6弱の揺れに襲われた茨城県在住の整理収納アドバイザー宅では、食器が1枚も割れなかったそうです。お皿とお皿の間にクッション材やキッチンペーパーなどを挟んでいたため、すべりにくかったのです。あくまでこれは一つの例ですが、面倒だと後回しにするより、安全面を考えると今すぐやらなければならないことがたくさんあると思うのです。

 ホームセンターには、多種多様の耐震グッズが売られています。高い所にある小物を固定したり、家具の耐震性を見直してほしいと思います。しかし、いろいろな物が高い場所に乱雑に置かれている場合は、耐震以前の問題になります。狭い住宅事情で、安全な低い場所だけに物を置くのは、難しいこと。だからこそ早急に高い場所の物を整理し、耐震を考慮した収納方法に切り替えてほしいと思います。そして、いざという時には机の下にもぐるなど、自分の身を守ることだけを考えられるように。

 これから整理収納アドバイザーの私にできることは、今まで以上に整理収納で得られる安全面の効果を発信することだと思っています。






(上毛新聞 2011年4月11日掲載)