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◎意見交換で実効性を 毎年、恒例の学内合同企業ガイダンスを、今年も2月に開催した。大学の体育館に県内を中心に企業の人事担当者に参集してもらい、本学の3年生が関心のある企業の説明を聞くというものである。 相談の間を見計らって、お礼も兼ねて十数社の人事担当者に「企業が求める人材像」を聞いてみた。一定の基礎学力を問うところは少数派で、多くはコミュニケーション能力とか課題解決力、忍耐力、明るさ、好感度といった広い意味での社会力、人間力といったものに属する能力・特性を挙げていた。 ところが、これまでの学校では、社会力、人間力といった社会で生き抜くための武器を身に付けさせる教育はほとんど行われていない。学校と社会の接続の場面である就職の現場に関わった者であれば、学校で高く評価される学生・生徒像と、企業等で高く評価される学生・生徒像が異なるということは、感覚的に感じていたと思う。感じていながらも強い対応の必要性を感じなかったのは、日本経済の成長に伴う人材需要の継続により、そのギャップが問題として表面化しなかったからであると思う。 それがリーマンショックに端を発する不況による人材需要の減少、そしてそれに加え、生産拠点の海外移転や人件費抑制のための非正規社員比率の増加、グローバル化による外国人社員の増加といった構造的な問題により、一挙に表面化してきたのである。この結果が、昨年度の低い就職内定率や、15歳から24歳までの若年労働者層において41%が正規雇用でないという、異常といってよい事態に現れている。 このような状況に至っては、もはや問題の先送りは許されない。今年の1月に出された中央教育審議会の答申でも、学校から社会・職業への円滑な移行に関して社会全体を通じた構造的問題が存在することを指摘し、社会を構成する各界が一体となって対応することの必要性を提言している。 社会の構造が変化したことで生じてきた問題点であるならば、学校教育の構造自体を変えていくことが本来的な対応であろう。中央教育審議会の答申でも、新たな学校種を創設することの検討の必要性も挙げられている。しかし、短期的な成果の必要性をも考えるならば、このような抜本的な対応と並行して、現行の枠組みの中で可能な対応を実施することも求められる。 送りだす学校、受け入れる学校、そして産業界でも、連携してのキャリア教育、職業教育の必要性を既に一部では感じていると思う。また行政でも連携を促進する動きが出始めている。このような動きをより実効性あるものとするためには、関係者、それも直接の関係者間での早急な意見交換とプランづくりが急がれる。 (上毛新聞 2011年4月12日掲載) |