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学習塾経営  福田 一男(大泉町吉田)



【略歴】新潟大大学院修了。三洋電機で半導体開発に携わり、07年、県内公立校で初めて民間から登用され、昨春まで太田商高校長。著書に『コスモスは咲く、必ず咲く』。


震災からの復興



◎リーダーシップ発揮を



 3月11日14時46分に東北地方太平洋沖で発生した地震はM9・0の巨大地震であった。エネルギーの大きさで比較すると、1923年に発生した関東大震災M7・9の約50倍、95年の阪神・淡路大震災M7・3の約350倍、広島に投下された原子爆弾の約4万倍となる国内観測史上最大の地震となった。

 わが家では本棚の書籍類がすべて床に投げ出され、食器棚の茶碗や皿が何枚も割れた。冷蔵庫は数十センチも動き、テレビは倒れ、はじめて身の危険を感じた。揺れが収まったあと、テレビをつけると震源が三陸沖、最大震度が7ということはわかったが数秒後には停電してしまった。

 ラジオそして翌日の新聞、テレビ報道で地震直後の大津波により東北の太平洋沿岸部が壊滅的被害を受けたことを知った。岩手県沿岸部で約38メートル、6千キロメートルも離れたハワイ諸島で約2メートルの津波を観測した。また、地球の自転速度が100万分の数秒短くなり、日本が約2メートル40センチ東に移動したともされ、この地震が地球規模であったことがわかる。さらに、福島第1原発で冷却機能が失われ、大量の放射能漏れが発生する最悪の問題も露呈した。

 通信手段が遮断された状態での情報受発信や避難方法、食料確保、ライフライン復旧などは個人レベルでは対応が難しく、国・県・市町村や企業をはじめ各職場トップの強力かつ迅速なリーダーシップが重要となる。昨年8月に起きたチリの鉱山落盤事故で33人全員が生還できたのも現場監督の強力なリーダーシップによるところが大きかった。

 今回の災害において民主党内閣の初期対応には大いに不満が残るが、官房長官の昼夜を徹しての記者会見や消防庁、自衛隊幹部等の決死の行動などは国民を勇気づけた。こういう行動が国民をパニックから救い、勇気を与え、復興を可能にする原動力になるのだ。

 一方で、国家的危機対応のため入閣を要請された自民党総裁の党利を優先した姿勢や東京電力トップの他人事のような記者会見などはその対極であろう。

 私の住む大泉町でブラジル人をはじめ多くの外国人がリーダーシップを発揮し、被災地へ救援物資を提供しているというニュースを聞き、うれしくて涙が出た。海外メディアで報じられたように、海外であれば暴動・略奪が発生する事態であったが、日本人の冷静そして秩序ある行動に称賛の声があがった。

 太平洋戦争が終結する少し前に元日本駐在仏大使のポール・クローデル氏は「私は世界で滅ぼしたくない国がある。それは日本だ。彼らは貧しい、しかし高貴だ」と述べている。それぞれができる範囲でリーダーシップを発揮してこの国難を乗り切ろうではないか。この小さいが素晴しい日本の復興のために。






(上毛新聞 2011年4月13日掲載)