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前・神流町恐竜センター学芸員  佐藤 和久(神流町神ケ原)



【略歴】埼玉県出身。千葉大卒。モンゴルでの化石発掘を機に不動産会社を退職。1999年から2011年3月まで恐竜センターに在籍。03年には学芸員の資格を取得。


化石クリーニング体験



◎人引きつける本物の力



 1999年4月から中里村恐竜センター(当時)で働くことになったが、当時群馬県は「一郷一学」を推進していた。恐竜で村おこしをしていた中里村(当時)は「恐竜学」を一郷一学として掲げ、翌年、恐竜に関する出前講座を実施することが決まった。私はその担当となり、県内の学校などに出向くことになった。

 村そして私にとっても初めての経験だったが、方法は私に一任された。そこで、まず何ができるかを確認し、それらをまとめることから始めた。

 当時、私はモンゴル恐竜などの化石クリーニングを行っていたので、出先で化石クリーニング体験を行うことを計画した。また、恐竜の足跡付近で化石発掘体験を指導していたので、そこで産出する化石や地質などを写真や図でまとめ、わかりやすく説明することを検討した。ただ、当時はまだパソコンの普及が十分でなかったため、ほとんどの学校に設置されていたOHPを活用することにした。

 ところが、資料作成などに時間がかかり、10月から3月までの6カ月間で出前講座を行うことになったため、希望があるのか心配したが、周囲のご協力により無事開催できた。

 この出前講座の特徴は今では特に目新しくないが、体験型の講座である。というのも、私自身本物の化石を触ったりクリーニングしたりしていたので、化石を写真で見てもつまらないことを実感していたからである。そこで、できるだけ本物を見たり触ったりできる講座とした。事前に出前先と打ち合わせ、どのようなことを求めているのかを聞いて、メニューを作成した。

 最初は万場町立万場小学校(当時)で行ったが、思った以上に化石クリーニング体験の人気が高かった。その様子は新聞で取り上げられ、さらに次の出前講座の様子がテレビで放映されたこともあり、最終的には15カ所17回を数えた。

 講座後の感想や私自身の実感として、化石クリーニング体験は非常に好評だったが、1回にできる人数や時間に限りがあったため、思うように体験させられず、反省の連続であった。

 また、当初モンゴル恐竜をメーンにした体験だったが、数が足りなかったため、地元産化石も持って行った。それでも本物の化石に触るだけで参加者は満足していたように感じ、生徒が化石クリーニングをしている時の目の輝きは特に印象的だった。おかげで、本物の持つ「人を引きつける力」を実感できた。恐竜センターは小さな施設であるが、化石という「地域資源」を生かすことで、他の大きな施設との差別化が図れると感じたのである。

 最後に東日本大震災で被災された皆さまにお見舞い申し上げます。そして、1日も早い復興をお祈りします。







(上毛新聞 2011年4月16日掲載)