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NPO法人・県スローフード協会理事長  田中 修(高崎市浜尻町)



【略歴】渋川市北橘町出身。九州大大学院修了後、1976年に県庁に入庁。県農業試験場、農業担当理事兼農業局長を経て、2008年から現職。放送大学講師も務める。


見直そう日本型食生活



◎原点は地域農業や家族



 NPO法人群馬県スローフード協会は、「毎月19日は家族でいただきますの日普及促進」事業(県の委託)の一環として、県内農業系高校4校との食育連携に取り組んだ。

 食事マナー研修(1校)、郷土料理研修とパネルディスカッション(3校)などで、食事マナー研修では、日本食と箸づかいについて講演会を行った。郷土料理研修とパネルディスカッションでは、地域作物を使った料理研修と試食、その後「若者の未来を拓(ひら)く食と農」をテーマにパネルディスカッションを行った。コーディネーターは桐生大学の笠原賀子教授(栄養学)にお願いし、パネリストにはPTAや地元農業者に参加いただいた。

 農業者から「農業はとてもやりがいのある仕事、皆さんも農業に夢を持ってほしい」、生徒からは「お母さんやおばあちゃんの作った野菜や料理にもっと関心を持つ」「これからはきちんと朝食をとりたい」といった意見が出された。

 食育については、先進諸国ではさまざまな取り組みが行われている。目的は明確で、飽食による肥満、がんや心臓病、生活習慣病対策である。しかし、米国などでは家庭料理が消え、ファストフードや冷凍食品が増大する中、肥満比率の減少に効果が上がっていないこともWHO(世界保健機構)の近年の資料で示されている。そこで注目されるのが、OECD(経済協力開発機構)諸国の中で最も肥満比率の低い日本の米を主食に、豆類・野菜・魚を副食とした「日本型食生活」である。

 日本では、カロリーベース食料自給率40%でありながら、海外からの輸入により食料は比較的豊富である。そして、食の欧米化やファストフードの増加などにより肥満、がんや生活習慣病が増加しているが、「日本型食生活」はあまり重要視されていない。

 また、核家族化が進み、通学や通勤の時間差から食生活は乱れ、朝食の欠食者も増加し、一家団らんの食事は少なくなり、家庭料理や伝統食の継承もないがしろにされている。

 さらに、日本の農業の担い手は高齢化し減少しており、地域作物の画一的量産化が進み、地域の伝統作物(品種)は消えつつある。

 「日本型食生活」の原点は、地域作物や伝統食を守る地域農業と家族により支えられていることが、あらためて高校との食育連携事業で確認された。

 高校生や多くの若者に、家族団らんの食事を大切にし、地域の伝統作物や伝統食・郷土食を守る意識を高めてもらうことにより、家族ぐるみで「日本型食生活」を守り、楽しむ食文化が発展していくことを願う。







(上毛新聞 2011年4月17日掲載)