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片品村文化協会長  千明 政夫(片品村摺渕)



【略歴】片品村生まれ。旧制沼田中学卒業。農業の傍ら、約30年間PTAとして村の教育に携わり、小中高校のPTA新聞の発刊に尽力。2007年から村文化協会長。



尾瀬文学賞俳句大会



◎風土や人情を表現して



 東日本大震災で亡くなられた方の御冥福、また、片品村に避難された皆さまのやすらぎとともに、平常の生活の戻られる日を、心よりお祈り申し上げます。

 2004年、尾瀬のある片品村の「戸倉」という地名を「尾瀬」に変更しようという意見が出て、話題になりました。

 このとき私は、上毛新聞のひろば欄に「東北と関東の重要な接点としての戸倉関所跡、また、官軍と幕府軍の戸倉古戦跡など、歴史上の大切な戸倉の名を消すのはもったいない」としたうえで、「尾瀬という地名はもっと大切にしてほしい」という一文を投稿し、掲載していただきました。

 これに対して、反響は大きく、時には国会議員の方からもお便りをいただいたこともありました。

 その後、結局は「戸倉」は残されることになりました。さらに曲折を経て、環境省、福島、栃木、新潟、群馬各県の各関係者の大きな努力で、07年8月30日に尾瀬国立公園が誕生しました。私が希望した通り、戸倉、尾瀬の名称が大事にされることになりました。

 この指定記念行事の公募が、記念行事実行委員会(会長・千明金造村長)より発表されました。私はこの行事を、尾瀬を象徴する事業に育てたいと思いました。そこで浮かんできた曲が、終戦直後の荒れ果てた国土に、NHKのラジオ歌謡で、一週間流された「夏の思い出」(作詞・江間章子、作曲・中田喜直)という曲です。この詞のように、尾瀬や片品の風土や、人情などを表現する俳句や短歌、詩を公募して顕彰するという案を提案し、採用されました。

 実行段階で、約60年前から活動している片品村俳句作家協会(現在は私が会長を務めています)を受け皿にして、まず尾瀬文学賞俳句大会という形で発足、将来的には江間章子賞のような形で詩の募集など一歩進めていくことになり、08年から片品村文化協会を中心に村の補助金で第一歩を踏みだしました。

 2年目は、県俳句作家協会の関口ふさの会長をはじめ専門家など各方面の方々のご意見を参考に、村ぐるみで取り組むことになり、村長を会長として、新しい実行委員会が構成され、しっかりとした歩みが始まりました。

 自然を通して身近な環境を考えるきっかけにしてもらうため、県が県内小中学校を対象に始めた尾瀬学校の参加校に、教育委員会が俳句大会のパンフレットを送っており、小・中学生の素晴らしい作品が投稿されています。

 これまで県や村、多くの企業、各団体協力をいただきながら、年々充実しており、皆さまとともにさらに発展させていきたいと思います。







(上毛新聞 2011年4月18日掲載)